ギャグ
□雪遊びだぁ!!
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アイルランドのとある街。
早朝。
「おぉー、見ろよライル!!雪がこんなに積もってる!!」
部屋の窓から身を乗り出して、12歳の少年、ニールは言った。
そばでその様子を見ていたニールの双子の弟、ライルは呆れたようにため息をつく。
「雪なんて珍しくもなんともないじゃん。しょっちゅう降ってるよ」
「でもこれ、この冬最初の雪だろ?
すごいなー、こんなに積もるとは……雪遊びをしろという天からの啓示じゃね!?」
瞳をキラキラさせてライルを見つめながら言うニール。
「…………。オレはやらないからな。」
「えぇー!!なんでだよ」
「嫌いだからだよ、雪遊びなんて。寒いし。疲れるし。ガキっぽいし」
「……。とか言いつつ、学校のやつらと雪合戦する時に1番はしゃぐのってお前、」
「ち、違う違う!そんな訳あるかぁあああ」
「顔が真っ赤だぞ?ライル」
にこーっと笑顔になりながらライルの頭を撫でるニール。
ライルはその手を叩くように払いのけ、不機嫌顔でそっぽを向いた。
「ひどッ。」
「酷くねーし!あーもう、さっさと兄さん1人で雪遊びしに行っちゃえよ。天からの啓示なんだろ?」
ライルの辛辣な言葉に、ニールは思いっ切り落ち込んだ。
「……そんな、1人で雪遊びとかイタいし。
ていうかライルくん、いつの間に『兄さん』なんて言うようになったんだよ…。ついこの間まで『お兄ちゃん』って呼んでくれてたのに」
「オイコラ待て、いつの話だそれ。2、3年くらい前のことだろーが」
ニールの頭に『ずびしっ』と手を振り下ろすライル。
「いだっ(泣)な、なんだよ、オレそこまで悪いことしてないじゃん?」
「ウザい。ていうか早く家から出て雪遊びすれば?オレの視界から消えちゃえよ」
「…い、いつの間にこんな凶悪な弟になったんだ…!」
「はぁ?言っとくけど普段キレない分、兄さんの方がマジギレした時ヤバいんだからな」
「………そーかぁ??」
困ったように疑問符を浮かべるニール。
そんな無自覚な兄に、ライルは思いっ切りため息をついた。
「……あ、そーだ。1人が寂しいならエイミーと行けば?」
「エイミーはちょっと風邪気味らしいから遊べないって。」
「そういえばそうだった…。
じゃあ学校のやつらと遊べば?兄さんってたくさん友達いるじゃん。イヤミなくらい」
「……それがさ、その、あ、あいつら全員と連絡取れないんだ。音信不通!行方不明!」
ニールがそう言った瞬間、間髪入れずに再び頭に手刀を食らわすライル。
「いだぁー!!(泣)(泣)」
「わかりやすいウソついてんじゃねーよ。」
「うー…。つかライルが遊んでくれれば済む話なんだよ。
なぁ、なんでそんなにダメなわけ?」
「兄さんがウザいからだよ!!」
「えぇー!!(泣)」
と、そこで部屋のドアが開いた。
中に入ってきたのは双子たちより3つくらい年下の、妹のエイミーだった。
なんだか怒った表情をしている。
「エイミー?風邪は大丈夫なのか?」
ライルが問い掛けた。
「さっきまで寝てたよ、でもお兄ちゃんたちの大声で起きちゃったの!!
ていうかライルお兄ちゃん!ニールお兄ちゃんをイジメちゃだめでしょ!!」
エイミーは両手を腰にあて、ライルに向かって怒鳴った。
幼くて可愛らしいながらに張りのある声に気圧され、ライルは素直に謝る。
「…………あ、えと、……ごめん。」
「わたしじゃなくてニールお兄ちゃんに、ごめんねって言うの!!」
「……………、…………。に……………兄さん…………ごめんね……………………」
「……そんな屈辱感満載な顔で言われても……」
むしろ悲しくなるニールだった。
しかしエイミーは、そんなニールに対しても目を吊り上げて怒り出す。
「ニールお兄ちゃん!
ライルお兄ちゃんとちゃんと仲良くしなさい、それでも1番上のお兄ちゃんなのー!?」
「え。………ご、ごめんなさい。」
「心がこもってなーい!本当に反省してるの!?」
「し、してるよ…。」
おずおずと言うニール。
「オレもしてる…。」
おずおずと言うライル。
「本当かなぁ?
それじゃ2人とも、仲なおりの印に一緒に雪遊びに行くこと!!いいね?」
エイミーは有無を言わせない態度で言い放った。
「「……………………はい……」」
うなだれながら双子は返事をしたのだった。
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