学パロ

□5.とある双子の存在証明
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…眼鏡が無いと何にも見えない、明日も見えない。


というのは嘘だけど。


つか、伊達だし。



俺は学校では黒縁眼鏡をかけていることが多い。


放課後は、かけてる意味があんまり無いからはずしているが。


じゃあかけてる意味って具体的に何なのかというと、双子である俺と兄さんを見分けやすくする、ということな訳で。


……眼鏡でもしないと、皆は兄さんと俺との区別がつかないみたいだからな。


何故か刹那とティエリアは、眼鏡なしでも区別がつくようだが。



……で。


今日は眼鏡を忘れてきた。


「………。」


ティエリアからパクろうかな。


でもあいつの眼鏡って、フチ無しだし何かダサいからなぁ……。


つか、そもそも。


俺が眼鏡かけてない時くらい、兄さんが何か区別がつくようなオプション付ければ良いんじゃね?


…髪むすぶとか。


ヘアピンでも付けるとか。


俺より兄さんの方が微妙に髪長いんだし。



とか考えてるうちに、1時間目の始業ベルが鳴ってしまった。


俺はため息をついて、窓際から自分の席へと移動する。


ちなみに兄さんと俺はクラスが別々だ。


双子はやたらと別々のグループだったりクラスになることが多い。


そういう訳で今の所は、先生やクラスメート達は俺がライルだと分かるだろう。


席につき、教科書を取り出すべく机の中を漁る。


……え〜〜っと、つーか1時間目の授業って何だったっけ。


今日は火曜日だから…確か、


「ライル、何してるの?1時間目は選択授業なんだから、早く移動しないと。」


後ろから聞き慣れた声が言った。


振り向かなくても誰か分かる。


いや、まあ、誰か分かっていても結局振り向くんだけど。


「…アニュー。おはよう」


案の定、そこにいたのはアニューだった。


俺の2つ後ろの席で、少し慌て気味に教科書類を机から取り出している。


今日も相変わらず可愛い。


写メりたい。


「おはようライル…って言ってる場合じゃないわ、早く準備しないと。
ライルが選択した授業って、確か第2外国語だったわよね?」


「あー。そういえばそうだったな。特にグローバルに関心持ち合わせてる訳じゃないけど何となくそうしたんだったわ。」


「何となくで第2外国語を選ぶってある意味すごいわね…。」


「まあ今まで1回も出たことないんだけどな。」


初日からずっとサボっている。


今更出席しても何の得も無いだろう。


とか考えていたら、


「……………。」


いつの間にかアニューがとても残念なものを見る瞳でこちらを黙視していた。


「……あ、アニューさん?」


何でそんな突き刺すような冷たい眼差しを向けてくるんだ。


なんだろう……なんか…軽く死にたくなってきたぞ。


イノベイド仕様の金目になられた方がまだマシだわ。


鎮める為には、やはりあの言葉を言わなければならないのだろうか…。


「………わ、分かったよ。出れば良いんだろ?授業に。」


俺が仕方なくそう言った途端、アニューの表情がパッと明るくなる。


「うん!出た方が良いわ!!学生が授業をサボるなんて駄目だもの!!
じゃあ私、そろそろ自分の授業に行くから。頑張ってねライル!」


アニューは割と慌ただしく教室を出て行った。


もしかしたらアニューの選択した授業の教室は、ここから遠い場所なのかもしれない。


「………………。」


仕方ない。


アニューと約束しておいて今更サボるのは、さすがに気が咎める。


…つかいちいち真面目すぎるぜ、アニューさん。


……そして無言の脅迫が恐すぎるぜ、アニューさん。




そんな訳で俺は、結局教科書が無かったのでノートと筆記用具だけ持ったまま、選択授業の教室へと向かうことにした。


今まで出席したことは無いとはいえ、一応教室の場所は分かっていた。


エスケープ中にその教室の近くは通れないから、必然的に覚えていた。


「……めんどくせ…」


大体、選択授業みたいに卒業に関係ない授業はやる気が全く出ないんだよなー…。


必須科目なら単位を気にして割と出席するし、それなりに高成績も保持しているんだが。


…それに必須科目は、当然兄さんもやってる科目だからな。


成績で兄さんに負けたくは無い。


他の分野では才能の差で負けていても、勉強に関しては努力次第でいくらでも勝てる。


ぶっちゃけ、勉強ほど才能に左右されない分野も無いと思う。


人格には左右されるかもしれないが。


……でも選択授業は…なぁ。


兄さんが俺と同じ授業を選んでるってんならまだしも……。


とか考えながらのんびり歩いていたら、選択授業の教室に辿り着いていた。


既に授業は始まっている時間帯だったので、後ろの扉から入ることにする。


あんまり意味は無いが、なるべく音を立てないように扉を開けて中に入った。



「……あら?珍しいわね」


教卓で出席簿を持っていた女教師、スメラギ・李・ノリエガが俺を見て言った。


へぇ、スメラギ先生が担当だったんだな。


今初めて知った。…って言ったらめちゃくちゃ怒られそうだ。


「…どーも。」


とりあえず挨拶。…でもやっぱ気まずいな〜…。


「やっと来てくれたのねぇ。さ、どこでも好きな席に着いてちょうだい。どうせガラガラだしね」


「…………。」


確かに教室の中には10人ほどしか生徒がいなかった。


不人気なんだな…。


と。


教室全体を見回していた時。


何だか見知った顔を見つけた。


見知った顔っつーか…。


熟知してる顔っつーか。


……双子の兄の…ニールだった。


「ライルじゃねーか!お前、やっと出席する気になったのか」


俺の方を見て、びっくりしたように言う兄さん。


何で兄さんがこんな授業を選択してるんだ。


なんだ、もしかしてグローバルに関心でもあんのか。


…マジでか。


「帰る。やっぱ帰るわ俺。」


即座に踵を返す。


「何でだよ!?せっかく来たんだから授業受けていけよ!!」


「…嫌だ。兄さんと一緒に授業とか嫌だ。勝てる気がしねーもん。俺って基本的に復習で学力つけるタイプだし」


「は??勝つ?…ていうか堂々とエスケープすんなって!!」


「そうよライル!私の目の前でそんな勝手なマネは許さないわよ!!」


スメラギ先生に毅然と言われてしまった。


まぁ教師としては当然の反応だけれど。


アルコール渡せば許してくれたりしねーかな……。







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