学パロ

□3.とある二重の人格連盟
1ページ/5ページ


in放課後の教室。


僕、つまりアレルヤと、ハレルヤ以外は誰もいない教室。



「39点…」


手に持った数学の答案用紙に書かれてある文字を、そのまま声に出してみた。


39点。


ちなみに今回の平均点は、68点。


……。


「すげーだろ!!この俺が39点だぞ!?」


僕の横に座っているハレルヤが、得意顔で話しかけてきた。


「…うん。すごいね」


とりあえず苦笑いで褒めてみる。


…まあ確かに、ハレルヤにしては良い点数だけどさ…。


でも赤点だし。


ここはやっぱり勇気を持って、ハレルヤに「もっと勉強しなよ」って言うべきなんだろうか。


よし。


また今度、言うことにしよう。



「…ふん。39点か。貴様の頭の程度がどれだけ低いかよく分かる点数だな」



突然後ろから声がして、驚いて振り向くと、そこにはソーマが居た。


…なんだ、マリーじゃないんだ…。


「あ!?何だよ何だソーマちゃんじゃねぇかよ!!俺の頭の程度が低いってどういう意味だコラァ!!」


「どう考えてもそのままの意味だろう。…全く、同じ超兵とは思えない」


「んだとゴラもういっぺん言ってみろ!」


「ちょ、ちょっと、いい加減にしなよ2人ともっ」


完璧に喧嘩腰の2人の間に慌てて入る。


ええと、…とりあえずここは話題の転換をはかるべきだろう。


「ソーマ、どうして君がここに?君と僕らとじゃクラスが別なのに」


つまり、マリーともクラスが違うんだよねぇ…。


というか、どうして普段はマリーなのに、今はソーマになっているんだろう。


「ふん。…実はマリーの奴に、あることを頼まれてな…」


つまらなそうに、ソーマは言った。


「あること、って…?」


何だろう。ソーマじゃないと出来ないことなんだろうか。


「…。ハレルヤの家庭教師を頼まれた」


とてつもなく嫌そうに、ソーマは言った。


「ええぇっ!!!?」


「はぁあ!!!??」


「うるさいっ!わ、私だってやりたくないんだ!けど、マリーが…っ」


「…マリーが?」


「マリーが…私の…恥ずかしい写真をバラ撒くと……っ」


「………」


マリーの隠れSが発露してしまった瞬間だった。


…けど、マリーのことだからきっと、普段仲が悪いソーマとハレルヤが少しでも打ち解けるようにっていう、配慮なんだろうなぁ。


マリーは優しくて良い子だから…。


「オイ、アレルヤ!!何ほのぼのとしてやがんだ。どうせまたマリーのことでも考えてたんだろ」


「ち、違うよ!!べべべべ別に考えてないよ!!



「……。まあいいや。とにかく、俺はこんなクソ女とお勉強なんざまっぴらごめんだ。アレルヤ、てめぇが代わりに教えてもらえ」


「それ、果てしなく無意味な気がするんだけど…」


ちなみに僕は今回、数学はけっこう上手くいって83点だった。


…ティエリアには何故か、「アレルヤらしくない。空気を読め」と言われたけど。


「…良いことを思いついたぞ。」


ふと、ソーマがつぶやいた。


「何だい?」


「どうせロクなことじゃねーだろ」


「ふん、簡単なことだ。私がマリーに頼まれたことは、『ハレルヤの学力を上げて欲しい』ということ。だから…、」


あれ?さっきは『家庭教師を頼まれた』って言ってなかったっけ。


「だから、アレルヤがハレルヤの家庭教師をすればいい」


「………」


「………」


ハレルヤと僕はしばらく沈黙してしまった。


「そして、私が定期的にハレルヤの学力をチェックする。そうだな、月に1、2回の頻度でチェックしてやろう。
これなら、私もハレルヤも嫌な思いをせずに済む」


「…まあ確かに、俺はてめぇと顔を突き合わせずに済むわな」


「あ、あのぅ…。ちょっとっていうかかなり論点がズレてる気がするんだけど…」


「??何がだ。」


真顔で問われてしまった。


…天然っ子ソーマ…。


「いや、だから、それじゃソーマがハレルヤの学力を上げるってことにはならないんじゃないかなって…」


「何故だ。私はこうしてハレルヤに、普段はやらない勉強をする機会を与えたのだぞ。
…アレルヤ、お前なんてどうせ『ハレルヤにもっと勉強しなよって言うべきなんだろうか。よし、また今度言うことにしよう』とか考えて先延ばしにしようとしていたんだろう?」


「なっ、何故それを…!?」


ていうか一言一句も間違ってないし!!


「とにかく、これで私は使命を果たした。失礼する。」


「あっ、ちょ、ちょっと待ってよ!!」


慌てて引き留めようとしたけれど、ソーマはあっという間に教室を出てどこかへ行ってしまった。


「…ったく、人任せな女だぜ。どうしよーもねーな」


「…君の学力もどうしよーもないけどね…」


「あ!?何か言ったか!?」


「言ってないよ…」


……まあ、いつまでも問題から目を反らしていても仕方ないかな。


このままだと、本当にハレルヤは進級できるかわからないんだし。


「よし、やろう数学!とりあえずこのテストの復習だけやって帰ろうっ」


「はぁ!?急にやる気出しやがって何言い出すかと思えば…。俺には6時に見たいドラマの再放送があんだよ!」


「大丈夫、録画済みだから」


ちなみにハレルヤの見たいドラマとは、不良高校生が熱血教師の元で、野球部員として青春するお話です。


「録画してんじゃねぇよっっ!!嫌だ嫌だ俺は数学なんて嫌なんだよ無理なんだよぉぉ吐き気がすんだよっっ」


「そ、そんなに嫌なの?」


軽く引いた。


「お前知らねぇだろ!!数学が嫌いな奴がどれだけ数学を憎んでいるかを!!
英語が嫌いとか化学が嫌いとかそんなレベルじゃねぇ、数学が嫌いな奴はジンマシン出る勢いで数学に嫌悪抱いてんだよぉお!!!」


「そうなの?と、とりあえず落ち着こうよ…」


「数学のテスト中に指先が震えて文字が書けない奴の気持ちがてめぇに分かるか!?
次第に涙で答案用紙が見えなくなっていく奴の気持ちがてめぇに分かんのかぁぁぁ」


「そ、そんなに深刻だったの!??」


ハレルヤの弱点を発見しちゃった瞬間だった。


「とにかく落ち着いて!!僕が分かりやすく教えてあげるから!!ほら、ハレルヤだって憎き数学のせいで進級できないなんて嫌でしょ!?」


「ああ確かにそうだぁその通りだぁ、よっしゃやってやんよ!!」


「切り替え早っっ!!…じ、じゃあこの問題からいくよ?」


ハレルヤが一番最初に間違えている応用問題を、シャーペンで示す。


「えーーっとこれは、どうやって解くんだっけ…。…あ、」


「ん?どうした?さっさと教えろよ」


「これ、僕も解けなかったんだった…」


かなり難しい問題だ。これは後回しにした方が良いかな…。


でも、後回しにしたって解けない問題は結局解けない。


明日から数学の授業は新しい単元に入るから、今日中にテストの復習を終わらせたいのになぁ。


仕方ない、先生に直接教えてもらおう。


…と、その時。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ