学パロ

□2.とある眼鏡の裏側事情
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……学園一の人気者と言えば、誰?


そう聴かれたら、僕はこう即答する。



ニールに決まってる。



だって彼は、


頭が良くて、優しくて。


容姿も整っていて、人望も厚くて。


…それに、笑顔がとても、綺麗だし。


僕なんかじゃ、絶対に手の届かない人。


たとえ彼に優しくしてもらえても、勘違いしてはいけない。


…だって彼は、誰にでも優しい人だから。




今は、1時間目の授業前の休み時間。


…今朝は担任の連絡事項が特になかった為、1時間目の授業が始まる時間まで、まだ時間に余裕があった。


とは言っても、タイミング悪く手元に小説もないし、予習も済ませてしまっているし…。


暇だった。


僕は隣の机の方を、ちらりと見る。


その机の主、刹那・F・セイエイは、今日は欠席だった。


隣の机が空だと、かなりの違和感がある。


いつもなら、授業が始まるまでの空き時間、刹那と喋ったりしているんだが…。


「…それにしても、あの刹那がまさか風邪をひくとは…」


思わず独り言を漏らす。


……というか、欠席の理由は本当に風邪なのか?


案外、ガンプラを作る為に欠席したんじゃないだろうか?


「………。」


下校したら即お見舞いという名の確認をしに行こう、と思った。




「おーい、ティエリアー」




と。


教室の入り口から、ふいに僕を呼ぶ声がした。


誰だろう?…と思ったりはしない。


聞き覚えのある声だったから。


というか、絶対に忘れるはずのない人の声だ。


僕は慌てて教室の入り口へ向かう。


慌てすぎて教卓に足をぶつけたが、気にならなかった。


「な、何か用ですか!?」


ようやく彼の前にまで辿り着く。


…僕より少し背の高い彼の目の前に立って、彼を見上げて…、緊張で指の先が少し、震えた。


「そんなに慌ててこなくったって良かったんだぞ?
相変わらず真面目なヤツだなあ、ティエリアは」


そう言って、彼…、ニール・ディランディは、呆れたように笑った。


…自分の顔が急速に赤く染まっていくのが分かった。


「ニール…、用件を言って下さい。早くしないと授業が始まってしまうので…っ」


「んー?用事ってのはだなー、
職員室の前通る時に偶然聞いたんだけど、今日刹那って休みなんだろ?
だから一緒にお見舞いに行かないか、っていうお誘いをしに来たんだよ」


「べ、別に今伝えなくてはならないことでもないでしょう…。」


「俺のクラス、1時間目の授業はこの校舎の教室使うんだよ。
だからついでに伝えておこうと思ってな」


「なるほど…。…あ、あの、」


「ん?何だ?」


「……あの…、どうして僕を刹那のお見舞いに誘ってくれるんですか?」


恐る恐る聞いてみる。


だって疑問なのだ。


僕なんか誘っても、ニールには何のメリットもないはずだから。


「そんなもん簡単だ。お前が最近刹那と仲が良くて、そのクセ意地っ張りなお前じゃ見舞いなんて絶対しなさそうだから、誘ったんだよ」


ニールに、図星だろ、みたいな顔をされてしまった。


思わずムッとなる。


「失礼な!僕はちゃんと刹那のお見舞いに行くつもりでしたよ!」


「あっ、そうなの?ふーん、意外だな。
じゃあ、わざわざ俺と行かなくても良いか」


「えっ。」


そ、れは。


困る。すごく!


「に、に、ニール…っ、」


「何だよ?…ていうかなんか声がうわずってんぞ?」


ニールが疑問符を浮かべながら、真っ直ぐにこちらを見つめてくる。


頭の中がぐるぐる回り出したような気がした。


…ゆ、


勇気を持て、僕…。


「ニール、その、僕、は、……あなたと、お見舞いに行きたいっ!!」


言えた。


言えた、けれど。


恥ずかしすぎて死にそうな自分が、現在進行形で居た。


言われた側のニールは、少し驚いた顔をしていた。


そして、


「………うん。そっか。」


そう言って、ニールは僕を見つめたまま微笑んだ。


…やっぱり綺麗だった。


「じゃ、放課後に正門前で待ち合わせ、な。
勝手に1人で帰ったりすんなよ〜?」


「そっ、そんなことする訳ないでしょう!」


「ただの冗談だって。」


いたずらっぽく笑うと、ニールは次の授業のある教室へと向かっていった。


「……………。」


僕はしばらく、その場で立ち尽くす。


心臓がいまだにドキドキしていた。


……僕らしくない。



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