頂き物

□とある考査の読心能力。
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朝、登校時間。

水色の髪の毛を揺らしながら、廊下を歩く一人の少女がいた。一日の始まりだというのにさっきからあくびを連発しているのは、昨夜数学の宿題という名の敵と一晩中戦っていたからである。なんとか辛勝したものの、アオイの睡眠時間は3時間という、まさに『寝不足』という状態である。


「……ふわぁ……最近毎日が……ま……あれ、こういう時は何ていうんだっけ」


まぁいいや、とアオイはうーんと伸びをした。マンネリという言葉がぱっと出てこないほどに脳内は暇を持て余している。…この学園に在籍している者にとって『暇』とは何よりも嬉しいことではあるが。
最近は特にぴりっとした出来事がおこっていないので、宿題をして寝て学校に行って宿題をして……のエンドレス。なんてさびしい学園生活なんだと思うが特にすることもない。

階段を上がって、教室に向かう。


「うぁー……今日は数学がIIもBもあった……しかも1時間目と2時間目……」


今からでも遅くはないさぼろうよという悪魔の声とそんなこと言ってると本当に留年だよという天使の声が頭を駆け巡る。数秒考えた結果、留年は避けたいなということになってしぶしぶ教室に向かっているのだ。


廊下を曲がったところで、ふいにアオイは背中を叩かれた。


「アオイ、おはようっ!!」


後ろを向くと自分の背中を叩いたのはクリスティナだということが分かった。朝の挨拶は欠かしてはいけない。


「おはよう、クリ……」


最後まで言う前に、クリスティナの声が割って入ってくる。

“もう……何でアオイなのかなぁ……出逢ったことのないイケメン男子が無防備で歩いてたりとかしないのかなぁ……”

「……え?」


確かに今、クリスティナの愚痴のようなものが聞こえてきたのだが。しかしクリスティナはアオイから顔をそらして、窓から空を見つめていた。「晴れたら体育ができるのにねー」と小雨が降る空を見ていた。

だがとりあえず愚痴られてしまったので。


「あの……クリス、その、ごめん」

「ん、何が?」

「な、何がって……」


クリスティナとしてはアオイよりもイケメン男子との出会いがしたかったらしいので。


「あたしもイケメン男子探すお手伝いするから」


しゅばっ!!!とクリスティナが即座にアオイを見つめ返した。だがすぐに顔をそらして。


「な、何言ってるのアオイ、私はみんなの恋を見ていれば」

「え、だって今、イケメン男子が歩いてればいいのにって言わなかった?」

「いっ、言ってないよ!?」


今のクリスティナは明らかに慌てている。だがその意味がアオイには分からない。確かにアオイには聞こえたのに。……いや、聞こえていなければイケメン男子の話なんてアオイの頭には出てくるはずがない。


(あれー、聞き間違い?……でもなぁ……)


ごんごんと自分の頭を叩き、アオイは首をひねる。聞き間違いだとしたらイケメン男子に飢えているのは自分なのかもしれない。……まさか深層心理ではイケメン男子に出会いたいなんて思ってしまっているのか!?


「うぁーっ!!!あたしはこの学園で普通に生きるって決めたのに―――!!!!!!」


アオイのシャウトに、恐る恐るクリスティナが近づいて…


「あの、アオイ………」

「ごめん、ちょっと現実逃避してくる!!!」


クリスティナに向けてぶんぶんと手を振って、アオイは走り出した。とはいっても何か策があるわけではないので、とりあえず走ることにする。




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