頂き物
□愛玩少女
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なぜか朝一番に部屋に訪れた恋人を、不思議に思いながらも迎え入れたニールは、恋人の頭部に巻かれた桃色の布地を見て更に首を傾げた。
それは、彼がよく好んで着ているカーディガンだ。
何でそんなものを頭に巻いているのかと尋ねようとしたニールは、ティエリアの顔を覗き込んですぐにギョッとした。
――その瞳は、今にも泣き出しそうなほど潤んでいたのだ。
「どうしたんだ?何があった?」
尋ねてみるが、ティエリアは何も言おうとしない。
「ティエリア?ほら、何か話があるんだろう?」
心配そうでありながら、こちらを安心させるような優しい声音に、ティエリアはますます瞳を潤ませる。
不安から思わずニールを頼ってしまったが、ここまで来てティエリアは怖気づいていた。
だって、こんな異常事態は始めてなのだ。
自分では上手く説明が出来そうにもないし、何より、自分自身が何故こうなったのかを理解していない。
そして…もし気味が悪いと言われ、――彼に拒絶されてしまったら?
そんな悪い考えばかりが頭に浮かぶ。
ニールが優しいからこそ、ティエリアは悩んだ。
しかしそうしている内に、自分を見つめるニールの表情がどんどん曇っていく。
彼にそんな表情をさせたい訳ではない。
ティエリアは意を決して、頭上のものを隠す為に巻いていたカーディガンを取った。
そしてニールの反応を恐る恐る待った。
あまりにも驚く事があった時、人は言葉を失うのだと言うが――。
正にニールの様子はそれだった。
心配に言葉を掛け続けていた口はあんぐりと開き、目線だけは恋人の頭部からピョコンと飛び出しているものに注がれていた。
それはもう、見られているティエリアの方が、穴が開くのではないかと心配になるくらいの凝視っぷりだ。
正直、今にも涙が溢れ出しそうだった。
今、彼の目線の先にあるのは、髪の色と同じ紫紺の――長い耳。
それは正しくうさぎの耳と言っていいだろう。
こんな事がありえるのか?
それは、双方の意見だった。