BL

□言ってみて
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「……ティエリアー、」


ふと、あることを思いついて、


2人がけのソファで隣に座るティエリアに話しかけてみた。


名前を呼ばれ、ティエリアは手に持っていたコーヒーカップから口を離し、俺の方を見る。


「どうかしましたか」


「…えーと………」


事務的とも取れる返事に、つい話を切り出すことを躊躇ってしまう。


………さすがに、こんな堅苦しい雰囲気では言いにくい。


「…………?」


名前を呼んでおきながら続きを言わない俺を、ティエリアが不思議そうに見つめてきた。


透き通るように赤い瞳と、視線が重なる。


こいつの瞳、林檎飴みたいな色してんなぁ…。


まぁ何にしろ、このまま見つめ合っていても埒があかない。


気取られない程度に小さく深呼吸をしてから、俺は口を開いた。


「………、お前って……一度も俺に言ってくれたことないよな…」


「はい?…何をです?」


訝しげに言葉を返すティエリア。


「?」マークでも浮かんでいそうな、きょとんとした表情が可愛らしい。


微笑ましく思いながら、俺は言葉を続ける。


「………『愛してる』って、言ってくれてないよな」


その言葉を聴いた途端、ティエリアの顔があっという間に真っ赤になった。


「え!?………ぇ、えと?………その、…ぁ、あの、」


しどろもどろながらに何か言おうとしているけれど、上手く言葉にならないみたいだ。


予想通りのティエリアの反応に、思わず小さく笑みがこぼれた。


「な、何で笑っているんですか……っ」


ティエリアが恥ずかしさで赤くなった顔を隠すように俯く。


表情、まだ見ていたかったんだけどなー…。


「……………で、
いつまで待てばお前は言ってくれるんだ?」


優しい声音で聞いてみる。


髪の間から覗くティエリアの耳が、一層赤くなった。


「…………少なくとも……今は絶対言いません」


少しの間を置いて、俯いたままのティエリアが小さな声で返事をした。


…そんなに恥ずかしいのか。


ちょっと残念。




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