BL

□貴方と添い寝。
1ページ/5ページ



「………眠れません。」


真夜中に俺の部屋へと突然訪れたティエリアは、ただ一言そう告げた。


何だか疲れきった様子でフラフラしている。


ちなみに俺は寝起きでフラフラしていた。


現在時刻は夜中の3時。


………ティエリアさん。ちょっとこれは…冗談じゃねーよって感じなんだが。


せめてもうちょい早い時間に来てくれたらな〜…。


今のニールさんはティエリアといちゃつく気力すらゼロだよ。


「………くそ、眠いんだよ……眠すぎて何の気も起こらねーよ。」


テンション最底辺な俺の独り言を聞いて、ティエリアが慌て出した。


「あの、こんな時間に起こしてしまって、やっぱり迷惑でしたよね!すみません…」


「え。あ、いや、別にお前を責めてる訳じゃーなくてな?」


つか、やけに素直に謝ってくれたな…。


普段のティエリアなら『全力で僕を寝かせてみせろ』とか女王様(?)風に言いそうなもんだけど。


……最近のティエリアはデレ期なんだろうか。


俺に対してデフォルトで敬語だし。


可愛いから良いけど。


「とにかく、そこまで迷惑って訳でも無いから気にすんな。
…で、お前は何の用事でここに来たんだ?」


もしかして…『どうせ眠れないなら、いっそのこと一晩中僕を寝させないで下さい』という積極的な誘(ry


………自重。


「…その。どうすれば眠れるのか、貴方なら知っていると思って…」


伏し目がちに言うティエリア。


「…………そーか。」


頼られるのは嬉しいが…何だろうな、この寂寥感。


勝手に期待した俺が悪いんだろうけどさ。


「…しっかし、どうしたら眠れるか、ねぇ。
とりあえず羊でも数えてみるか?」


「…羊??」


疑問符を浮かべるティエリア。


……知らないのかよ。


そういう世間知らずな所も好きだけどな!!


「え〜と、何だっけ。
…羊飼いが自分の飼ってる羊を数えるんだけど、数えてる内に居眠りしちまうっていう話があってな。
それを引き合いに出した『羊を数えると眠れる』っていうおまじない的なものがあるんだよ」


「………ずいぶんと眉唾物な話ですね…。」


思い切り疑わしそうに言うティエリア。


つくづく頭が固い奴だ。


「あんまり深く考えんなよな…。とにかく試してみろよ、案外効くかもしれないぞ?」


「………。わかりました。試してみます」


イマイチ納得がいかない様子でベッドに潜り込むティエリア。


あれ、


それ俺のベッドなんだけど。


「……え、ちょ、待、…えぇー。何故に!?」


思わず動揺。


「???…どうかしましたか?」


ティエリアは平然としていた。


平然と俺のベッドに横になり、枕に頭を預けていた。


…こいつ、眠れないとか言ってるが本当は半分くらい寝ぼけてんじゃないか!?


「……それで、いるはずのない羊をどうやって数えれば良いのですか?」


ティエリアが毛布をかぶりながらこちらに問いかけてきた。


毛布から頭と指先だけ覗く的な構図になっていて可愛い。


…可愛いが、俺はこれからどうしたらいいんだ。


ティエリアがこのまま俺のベッドですやすや寝始めたら、俺はどこで寝ればいいんだ。


ティエリアのベッドで寝ればいいのか?


え……、ね、寝てもいいんですか?


いやいやいや、けど誰かにバレたらマズイどころの話じゃねーよ!!


じゃあ…素直に俺も目の前のベッドで寝ればいいんだろうか。


………………。


…………。


「……いいか、羊は自分の頭の中で想像すんだよ。
牧場に数え切れないくらい沢山の羊がいる所を想像してみ?」


とか言いながらさりげなくベッドに潜る俺。


………何故だろう、自分がイタい人間に思えてきた…。


おかしいな、自分の部屋にある自分のベッドに入っただけなのに……。


ティエリアはそんな俺に「なるほど」とだけ返事をし、わりと真剣な表情で羊を想像し始めた。


シングルベッドだからかなり互いの距離が近いんだが、それを気にする余裕もないくらい集中しているようだ。


…なんか虚しい。


少しは気にしてくれー。








.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ