BL

□2人きりのクリスマス
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クリスマス当日。

PM6:15。



僕は、とある街の時計台で刹那を待っていた。


待ち合わせの時間は6時。


にもかかわらず、刹那はやって来ない。


「……………………。」


…刹那め。


こんな寒空の下で僕を待たせて、一体何をやっているんだ。


せっかくこの僕が、クリスマスプレゼントのリクエストに応えてやろうというのに……。


はー…、と思い切りため息をつく。


真っ白だった。


…寒い。マフラーくらいしておけばよかった。失敗した。


……というか、何だか今の状況こそが失敗な気がする。




そもそもどうして僕が、クリスマスに刹那と待ち合わせをしているのかというと。


これが彼へのクリスマスプレゼントだからだ。


…ことの始まりは、1ヶ月ほど前まで遡る。







ミレイナ『クリスマスにはサンタさんがプレゼントを持ってきてくれるですー!
楽しみですぅ〜〜』


ティエリア『…へぇ。ミレイナは、いまだにサンタを信じているのか』


ミレイナ『信じるも何も、サンタさんは存在するですっ!!
…まあ、最近はあんまり来てくれないですけど…。』


ティエリア『そうなのか?』


ミレイナ『3年くらい前から音沙汰なしです〜…。もしかしたら今年も来ないかも…』


ティエリア『…………。いや、今年は来るさ。うん、必ず来る。』


ミレイナ『…むむ、アーデさんが来るって言ったら何だか絶対来るような気がしてきたです!
今の内に靴下を用意しておかなくちゃですっ』


ティエリア『ああ、それが良いと思うよ。…ところでミレイナは、サンタクロースからどんな物をもらいたいんだ?』


ミレイナ『…えーっとですねぇ〜、まだ決めてないです。
でもサンタさんの為にも、早めに決めておかないといけません。』


ティエリア『どうしてだ?』


ミレイナ『だってサンタさん、世界中の人達にプレゼントを配ってるですよ〜?
リクエストも世界の人口と同じ分だけありますから、きっと準備が大変です!』


ティエリア『…世界中の…人達?
サンタがプレゼントを配るのは確か、世界中の子供達じゃなかったか?』


ミレイナ『え??でもママもクリスマスプレゼントもらってたですよ?』


ティエリア『……………。』


ミレイナ『あー、クリスマス楽しみです〜♪
トレミークルー全員がプレゼントもらえるから、今年は皆でハッピークリスマスです〜♪♪』


ティエリア『………。………ぜ…全員……』







…と、いう訳で。


リンダもいまだにサンタを信じているのか、ミレイナはまだ幼いから許せるがリンダはどうなんだそれ有りなのか、つか今までサンタ役していたのはやっぱりイアンなのか、最近サンタになってないってそれMS開発が忙しいからか、馬鹿めミレイナの為にちゃんと毎年サンタ役してやれ、というツッコミを押し殺し。


僕はミレイナをがっかりさせない為に、サンタ役をすることにした。


その日の内に、トレミークルー全員からリクエストを聴いて回った。


皆は驚きつつも、リクエストを教えてくれた。


空気を読んでくれた何人かは、低価格なものを言ってくれた。


スメラギは超高級ワインを頼んできたが却下した。


そんな感じで、滞りなく計画は進んでいた。


………が。


刹那だけは欲しい『物』を頼まなかった。


あろうことかクリスマスを僕と2人きりで過ごす権利をくれ、と言ってきた。


…正直、何だそれはという感じだ。


そんなクリスマスプレゼント、普通サンタに頼むか。


ていうかクリスマスプレゼントというのはイヴの夜にサンタが渡すものであって、クリスマス当日に渡すものじゃないだろうが。


ミレイナだって今朝、


『サンタさん、本当に来てくれたです!!でも遠かっただろうなぁ、大変だっただろうなぁ〜。
今日はサンタさんも休業日だから、ゆっくり休んでほしいです〜!』


って言ってたぞ。


なのに何なんだ。


……もしかして、イヴの夜はサンタ(僕)が忙しいということを見越しての発言なのか?


だとしたら、そうまでして僕とのんびり過ごしたいということなのか!?


…ぇ、え、…何故。


刹那の意図がサッパリ分からない。


……だ、駄目だ。何だか混乱してきた。


――ていうか刹那はいつになったら来るんだっ!!


時計を見る。


…6時25分。


…………カップ麺(うどん)が5個も作れるほど待たされている…。


「……寒い。」


心細い。


街は大勢の人々で賑わっていて楽しそうなのに、


どうして僕はこんな思いをしなくちゃならないんだ。


…早く来い、刹那め。



と、その時。


人混みの向こうに、見覚えのある黒のくせっ毛と赤いマフラーが見えた。





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