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□クリスマスの予約
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クリスマスまで、あと1カ月。




「…刹那。今何か欲しいもの、あるか?」


唐突に俺の部屋にやって来て、ティエリアはそう言った。


「…いきなり言われてもな…」


顔には出さないが、内心面食らっていた。


というか、何故そんな質問をするのだろうか。


…もしかして、欲しいものを言えばクリスマスにプレゼントしてくれるのだろうか。


ティエリアが…サンタクロース。


……何だかシュールだった。


「何でもいい。言ってみろ、刹那」


デフォルトで不機嫌そうな表情で、淡々と促してくるティエリア。


せめてもう少し変わり映えのする表情をしてくれたら、少しはその真意を読み取れるんだが…。


「…そうだな。…今、欲しいもの…か」


「何かあるだろう、遠慮はいらないから言ってみろ。というか早く言え」


「…………。…じゃあ言おう。
MGダブルオークアンタ、PGストライクフリーダム、RGシャア専用ザク。この3つの内どれかが欲しい」


「……何だその、MGとかRGというのは…」


思い切り訝しげな顔をするティエリア。


「MGがマスターグレード、PGがパーフェクトグレード、RGがリアルグレードだ」


「説明されてもイマイチ分からないんだが…」


「まあ…平たく言えば全部ガンプラだ。」


「……………」


途端に呆れたように大きなため息をつかれた。


というか、何か怒っているようだった。


「…刹那。君はどうしていつもいつも、そうやってワンパターンなんだ。
もっと、こう…、他に何か無いのか」


「と、言われてもな…。俺が他に欲しいもの…か…、
じゃあ、ガンダム無双3が欲しい。PS3の方で」


「………だから、それがワンパターンだと言うんだ。少しはガンダムから離れて考えろ」


苛立たしげに言われてしまった。


…だが、ガンダムから離れて考えろと言われてもな……。


というか、ティエリアは最初に『何でもいいから』って言ってなかったか?


何か言論の自由が奪われている気が。


「ガンダム以外でも何かあるだろう。ほら、たとえば…、たとえば……」


言いながら、考え込むティエリア。


…思いつかないのか…。


本格的に考え込み始めたティエリアに小さくため息をついて、俺は助け舟を出すことにした。


「…そうだな。ガンダム以外だと新しいバイク、」


「高いから却下だ」


真顔で即答された。


「…………。……。…そうか」


確実に自由が束縛されていくのを感じた。


「1万円以内だ。1万円以内で考えてくれ、刹那」


「……かなり少ないな…」


「君1人だけにそんなに予算を割ける訳が無いだろう。
全員に配らなければならないのだから」


ティエリアはしれっと言ってのけた。


全員に配る、か。


「ということは、さっきからお前が聞きたがっているのは、やはりクリスマスプレゼントのことなのか」


「…っ……。ち、…違う。」


俺に問われて、『しまった』という顔をして目をそらすティエリア。


あっという間にその色白の肌が赤く染まっていく。


「……………」


ティエリアの為にも、何も聞かなかったことにしておこう。


「とっ、とにかく!言ってみろ刹那!!」


顔を赤くしながら慌てた様子で言うティエリアに、すぐに返事はせずに俺は考え込む。


というのも、ティエリアの望む理想の答えを、簡単に思いつくことが出来なかったからだった。


「……………」


「……………」


「……………」


「……………」


沈黙が部屋全体に訪れる。


ティエリアは気まずそうに視線を漂わせていた。


その様子を眺めながら、俺自身は別に気まずくも何ともなかった。





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