BL

□君と何処までも。
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一卵性双生児………って、


つまりは互いが互いのコピー、ということらしいけれど。


俺はそんな言い分、絶対信じない。


ついでに誕生日占いとかも絶対信じない。


何故かと言えば、俺は双子がどれだけ「違う」かを知っているからだ。


性格も嗜好も、よく見れば外見さえも違う。


例えば、



「………この白くてすべすべな肌は俺には無いものだっ!!」



「人の腕を勝手に撫で回しながら何言ってんだ兄さん」


どすっ、と俺の頭頂部に手刀を容赦無く繰り出すライル。


……半端なく痛ぇ。


しかも、さりげなく距離をとられた。


…久しぶりの兄弟水入らずだってのに。



ここはとある街のとある公園。


良く晴れた空を眺めながら、木陰のベンチに俺とライルは並んで座っていた。


他のマイスターやトレミーの連中はいない。


2人きりで休日を満喫中。


「……つーか何で兄さんがいるんだよ。色んな意味で。」


ライルが呆れきった表情でつぶやいた。


「細かいことは気にすんな!」


「細かくねぇよ。」


「まあいいじゃねぇか、別に。
家族なんだから、たまには一緒に休日を過ごしても」


「それ以前の問題だろ…」


大きくため息をつきながら煙草を1本箱から取り出して、吸い始めるライル。


…風向き的に、俺に煙が直撃するんだが。


「……つか、少しは健康のことも考えて禁煙しろよ…」


「あ?……嫌だね。煙草吸わねーとイライラすんだよ」


「おいおい、マイスターのくせに禁煙も満足に出来ないようじゃあ、先が思いやられんぞ?」


俺のその言葉に、不快さを隠そうともせずにムスっとした表情になるライル。


…え、何こいつ。


すねちゃって。可愛いな。


……とか言ったら確実に恐ろしい展開になりそうだから黙っておく。



「兄さんに言われなくったってなぁ、俺はちゃんと体には気をつけてんだよ」


「……へぇ〜〜」


何か嘘臭いな…。


「鍛えてさえいりゃあ、煙草吸っても酒飲んでも体調崩したりしねーんだよ。
むしろ我慢は精神衛生上、良くないだろうが」


もっともらしく暴論を展開するライル。


………煙草もアルコールも百害あって一利無しなんだがな…。


弟の将来が激しく心配だ。


「……ていうか兄さんも俺みたく、逃げ場を作れば良かったんだよ」


「は?…煙草だの酒だのに逃げて何になるんだよ」


「少なくとも、胃に穴を開ける回数は減らせたんじゃねーの」


「……………。」


随分、ずばっと言ってくれるんだな。


……まあ確かに…胃薬が友達の切ない時代もあったけどよ…。


あの頃の刹那とティエリアに接していて、ストレスを感じない奴は確実にいないだろうからな…。


「いやでも、ライルはそんなにストレス感じてねーだろ。
今の刹那やティエリアは大分丸くなってくれたんだからよ」


「……何かと言えば兄さんと比べられんだぞ?
ストレス感じない訳ないだろ」


ますます不機嫌になっていくライル。


…………。


「別に皆、そんなに比べたりしてないだろ。
そりゃ、最初は色々複雑だったかもしれねーが、」


「…皆が比べてなくたって、俺自身が兄さんと自分とを比べちまうんだよ。」


忌ま忌ましげに、ライルはそう言った。


「………………。」


それは………。


何と言うか。



俺が言い淀んでいると、ライルが平淡な声で話し始めた。


「やっぱさぁ…、双子って言っても、全然似てないもんなんだな。
…俺、小さな頃から兄さんみたいに人望があった訳じゃねーし。
射撃の才能だって、兄さんの方が上だったし」


「…ん?ライル、それは違うぞ」


「違わねーよ」


「何、いじけてんだよ。
……射撃の腕に関しては、俺とお前は得意分野が違ったんだから簡単に比べたり出来ないだろ」


当たり前のことを当たり前に言った。


…けれど、ライルにとっては気に入らない発言だったようだ。


ライルの俺を見る眼が、険しいものになっていくのが分かった。


「別にいじけてなんかいねぇよ…。
つーか、どうして兄さんは…そうやっていつもいつも…」


「………ん?」


「……兄さんみたいな奴と兄弟だと、…自分が小さく見えて仕方ないんだよ……」


ライルが苦々しげにそう言う。


…相変わらず子供みたいなことを言う奴だ。


真剣な気持ちで言っているライルには悪いが、…俺は思わず、小さく笑みをこぼす。


「な…っ、何笑ってんだよっ」


それに気づいて、予想通り怒り出すライル。


怒った時の表情が、子供の頃と重なる。


変わってないなー、こいつ。


そんなライルの頭を、俺はくしゃくしゃーっと思いっ切り撫でてやった。




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