BL

□シークレット
4ページ/8ページ


唐突に。



―――かちゃり



ロックが外れる音がしたかと思うと、

再びドアが開いた。

目の前には思いっ切り呆れた風なライルがいた。

俺が驚いて動けないままでいると、ライルは大きなため息をつく。

そして、



「入れば?」



ただ短く一言、そう言った。

拗ねたようにそっぽを向いて。

……可愛いったらない。



「いいのか?」


「疑うんなら帰れ」


「………。」



俺は素直に部屋に入ることにした。











ライルの部屋には何度か入ったことがあったが、今日ほど散らかっていると思ったことはなかった。

いや、散らかっているというか…放っておかれてるというか。

部屋に戻ってきて荷物を適当に放り投げ、そのままベッドにダイブしたという感じだ。

ベッドのシーツもぐしゃぐしゃになっている。



「……本当に寝てたんだな」


「当たり前だろ。兄さんを拒否る為の嘘だとでも思ったか?」


「半分くらいは思ってた」


「………。」


「…あ、そういやこれ、一緒に飲もうかと思ってたんだが…そんなに疲れてんならやめた方が良いよな?」



俺は片手に持っていた酒瓶をライルの目の前に掲げる。

その拍子に瓶の中身がちゃぷちゃぷと音を立てた。



「おっ。良いもん持ってんじゃねーか。飲む飲む!」



酒瓶を見た途端、唐突にライルの顔色が機嫌の良いものへと変わった。



「は…?疲れてんじゃねーのかよライルくん」


「それとこれとは話が別なんだよ。つーかこういう時はむしろ酒が飲みたくなんの!」


「……そ、そうか?」


「そうそう。ま、ありがとうな。兄さん」



ライルはさっきまでとは別人のように上機嫌にそう言うと、そのままグラスを用意しに行った。

………。

マジで酒の力は万能だったらしい……。

しばらくしてライルが2つ分のグラスを持って戻ってきた。

そのままベッドに腰掛け、テーブルを近くに引き寄せる。

どうやらベッドを椅子代わりにしたいらしい。

俺もそれに倣い、ライルの横に腰掛ける。

また警戒されたくはなかったので、きちんと1人分の隙間を空けて座った。



「よし飲むかっ」



酒瓶を開け、グラスに注ぐライル。

透き通った赤茶色の液体がグラスを満たしてゆく。

ラベルを見ると、そこそこにアルコール度数の高い酒だった。

さすがの俺も、これはちょっときついかもしれない。

しかしそんなことは気にしてないという風に、ライルはグラスの中身をごくごくと飲み始めた。



「…おいおい、そんなに飲んで大丈夫なのか?」


「平気だって。俺この銘柄、けっこう好きなんだよなぁ」



ふーん……。

じゃあもしかしたら、こんな高い度数の酒に慣れてるライルは、俺より酒に強いのかもしれないな……

………という俺の予想は、直後にあまり確信が持てるものじゃないということが発覚した。

グラスから口を離したライルの頬が、既にほんのり赤くなっていたからだ。

にもかかわらず、目元の赤くなったとろんとした瞳を伏せて、もうグラスに2杯目を注いでいる。

……………ていうか、表情が……

……何て言うか、その。

すげー色っぽいんですけど。

……どうしよう俺。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ