頂き物
□とある考査の読心能力。
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それから数分後。
「……毎日が暇だから、もしかして刺激がほしかったとか……!?」
さっきからそんなことをぶつぶつと呟きながらアオイは廊下を歩いていた。横を通る人をぼーっと見つめる。……残念ながらあまりイケメンと呼べる男子とはすれ違えなかった、と失礼すぎることを思っていた。……ロックオン先生とかティエリアと比べるのがいけないんだな。
自分が置かれている特別すぎるクラスには驚きを超えて感銘を受ける。
「……おっ」
前を見ると、見覚えのあるくしゃくしゃした黒髪の生徒が歩いている。おそらく。
「刹那、おはようーっ」
黒髪の生徒…刹那のもとにアオイは走った。刹那はどちらかというとイケメンではなく可愛いキャラだ。そんなこと言うと蹴られそうだけど。
刹那はアオイの方をちらっと見ると、アオイだと認識したのか再び前を向いた。
「今日は数学の小テストがあった」
唐突でありながら冷静な発言にアオイは一瞬凍りついた。
「……………え」
…そ、そういえば昨日先生が言ってたようなー………。
「ぎゃああああっ!!!何もしてこなかったよ!!!ってかどこが範囲なのかもわからないよ!!!」
「諦めろ」
その言葉はアオイの心にGNソード並みの切れ味で深く切り込まれた。これはもはやセブンソード並みの威力だ。
「ティエリアみたいなこと言わないで!!!助けて刹那!!!!」
「…俺が助けられると思うか」
「思わないけどそこは苦労を共にしてきたクラスメートのためにテスト範囲を教えてあげるところだよ刹那!!!!」
ここでアオイは思った。……数学がやばいのはきっと刹那も同じ。それなのに、このあたしを突き落す余裕は何なんだろう。
そしてアオイは自答した。刹那のこの余裕はきっと昨日から勉強をしてきたからに違いない。何てことだ。そろそろ刹那は抜け駆けをしそうな気がしてきた。
「……あーあ……そろそろあたしとハレルヤとミハエルでリアル3バカトリオができそうだよ」
「この学園風に言えば3バカトリニティだな」
「刹那、本編でトリニティ嫌いだったとしてもその言い方はいろんな誤解が生まれるから駄目だって!!!」
もうー、とアオイが刹那を見て、……そして、刹那がアオイを見た時だった。
視線が合う。
“……昨日は夜通しでガンプラのジオラマを完成させたが、今日は違うシチュエーションに挑戦するべきなのか……”
……そんな言葉が聞こえてきた。
「ちょっと刹那ぁ!!何だよ何だよ勉強してないんじゃん!!!よかったぁー……」
ばしばしとアオイは刹那の背中を数回たたいてやった。夜通しガンプラで何かをしていたのなら勉強などしているはずがない。良かった、仲間がいたと安心してほっと胸をなでおろす。だが刹那は。
「……何故わかった?」
「…え?」
無意識にアオイが刹那の顔を見る。そして、
“な、何故俺の心が読めたんだ!?”
それは驚きの声だった。
「ええええっ!?あたしが刹那の心を読んだって!?」
……本当に読めたのだろうか?だが今の言葉は確かに聞こえてきた。音声として、アオイの脳内に響いた。
何故?どうして?
頭がうまく働かない。いきなり訳の分からない状況に置かれて、それをアオイの頭は認識できない。
「……刹那、違うの、これは…!!」
振り向いたら、そこには誰もいなかった。おそらく刹那はどこかへ行ってしまったのだ。どこへ行ってしまったのだろう…と考えたが、今からでは追えるはずもない。しかも…アオイはそんな些細なことを考えている暇など無かった。
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