盲目の夢を見た
□お正月ネタ
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正月、一年の終わりと新年の始まりを祝う大切な行事である。
仕事を休み、おいしいものを食べ、遊び、寝る。
いろいろ省略するとそんな感じである。
そして、正月の遊びと言うのもさまざまある。
福笑いや凧揚げ、カルタ…
どれもが少なからず縁起のあるものだったりする。しかし…
「お前ら、室内でバドミントンやるんじゃない!!」
緑は怒鳴った。
目の前にはラケットと羽根を持った勇哉と郁人がいる。近くの床には太めのペン…<油性>が置いてある。なんの真似事だ。
まず、今の状況を把握するために彼らがこのような行為に至った経緯の一部始終を見ていたらしい藍に話しを聞いた。
事の起こりは勇哉のこの発言である。
「せっかくの正月だし、何かそれらしい遊びしたくないっすか?」
ちなみに、この時にエーティスにいたのは勇哉、郁人に瞳、由香利、藍…
要するにいつものメンバーだ。
正月休みまで店に来るんじゃない。実家に帰れ…瞳、目を逸らすんじゃない…
話しを戻すとそのあと瞳が嬉々として賛同し、次のようなことを提案したようだ。
「じゃあ、カルタやらない?カルタ!!私、家から持ってきてるんだよね」
もちろん罰ゲーム付きでね!!とやる気満々で…
しかし、断固として阻止された。
理由は「意味が瞳さんにしかわからない」からだそうだ。
結果、はねつきをやることに決まった。
…いきなり過ぎやしないか?
実は前からはねつきがやってみたかったとまたしても勇哉が発言。
女性陣には不利なため断ったのだが郁人がそれに乗ってしまった。
「しかし、羽子板や羽根なんて用意してないぞどうするんだ。」
「こんなこともあろうかとバドミントンならここに!!」
「やる気満々じゃねーか」
そういって勇哉はラケットを取り出す…と言っても子供用…ネットがビニールで作られている小型でなにやらキャラクターがプリントされているものだ…さらにシャトルコックも取り出した。
「さらに筆の代わりのマジックまでついて…」
「お前バドとはねつきの愛好家から怒られるぞ」
もはや、はねつきではない。
というわけで今、勇哉の額には中々消えそうにない肉マークが見え隠れしている。
「よし、何度も言うがここは室内だ…何故、議論されない」
「申し訳ありません…あの…」
バスッ
「俺のラケットぉぉおーーー!!!」
由香利の謝罪の言葉を遮り、間の抜けた音と勇哉の悲鳴が響いた。
ふと、見やると膝をつき、項垂れたようすの勇哉がいる。
「俺のカメノスケが無残な姿に…」
「…あのお二方を外に出すと恥ずかしいような気がいたしまして…」
カメノスケとはプリントアウトされたキャラの名前である。
放心状態になりつつも確実にこちらに近づいてくる勇哉を見て、由香利の言葉になるほど、と頷く。