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□お姉さまと人魚姫
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prologue



どこまでも遠くまで広がる、海。
私は、夕暮れ時の海が一番好きだ。
きらきらと水面を染める、夕日。
徐々に赤から青に、そして黒に変わる、空。
それは。

海が、顔を変える瞬間。

青く透き通った海から、黒いものに変わる。
途端に、奇麗なものが禍々しさを帯びる。
ざぁん。ざぁん。ざぁん。
……ぱしゃん。
ふいに、眺めていた先で水音が聞こえた。
私はよく目を凝らす。
昇り始めた月に照らされた、海。
大きな魚の尻尾が、水面に覗いた。
海風が、私の頬を撫でる。
風に乗って聞こえた微かな歌声は、誰だろう。
シンディの歌う声か。
遠くの船から聞こえた、パーティの音楽か。
それとも。

人魚というものの、歌声なのか。


ざぁん。

ぱしゃん。
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