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□△「馴れ初め?」(徳川×跡部)
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(U-17合宿所)
跡部「やべぇ…;|||」
合宿所…そこは色々な人間と共に寝泊まりする場所。
つまり、家の中や特定の人間以外にはひた隠しにしてきた秘密がバレる危険を常に孕む場所でもある。
跡部は今、その状況にすっかり陥ってしまっていた。
***
夕方…規定の練習を終え、1人自主練していた跡部。
意外と真面目な努力家でもあり、そしてテニスがとにかく大好きな跡部は練習にすっかり夢中で……トイレに行く事すら失念していた。
気づいた時には遅かった。
「あっ;」と思った時にはもう、タラタラと腿を伝う感触があった。…というより、その感触で気づいたのだ。
トイレが近い上、尿意に鈍感な跡部はこまめにトイレに行く必要があるのに…それを怠った。
結果…下半身はずぶ濡れに。
11月の夕暮れ時はもうかなり冷え込む。
濡れた身体では余計に寒くてたまらないが、こんな姿ではとても宿舎には帰れなかった。
「どうしよう…;」
携帯は練習中は使用禁止の為、今はロッカールームに置いてあるから、それでコーチに泣きつくこともできない。
どうしていいか分からず、グスグスと泣いていると、
「どうした」
と声がかかった。
振り向くと、フェンスの向こうには長身の高校生がいた。
(…1番コート、徳川カズヤ!)
実力者ばかりが集まったこの合宿所で最高峰の1番コートに陣取る男だ。
しかも初日からクールというより冷徹そうな印象を中学生達に与えた彼に、とてもじゃないが「ボク、漏らしちゃいました」なんて言えやしない。
無言で固まった跡部を訝しげに見た徳川はふと跡部の足元に目を遣り、納得したように頷くと金網製の扉を開けてコートに入ってきた。
***
「…漏らしたのか。子供だな」
溜息を吐きながらいきなりそんな事を言われ、跡部は一瞬で真っ赤になり声をあげて泣き出した。
「うるさい、泣くな」
抑揚のない声と冷えた視線に跡部は何とか泣き声を堪え「うぅ…っ」と必死で唇を噛んだ。
「…来い。夕食の時間になる」
「嫌だっ!;だ…って皆にバレる…っ(涙)」
「だからといって夜中になってもそこで泣いているつもりか。手間をかけさせるな。子供は素直にいう事を聞け」
徳川は跡部の手首を引っ張ってコートの外に連れ出した。
(続く)