平安絵巻

□△「翌日」
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***


さて、食事をするにも色々な手順や作法があるらしく、やっと食事をしていいと言われた時にはもう跡部のお腹はペコペコだった。
昨夜は食事をしていないから、もう丸1日近く食べていなかったのだ。


用意された膳で一際目を引いたのは、山盛りにされたご飯だ。
文字通りの山盛りで、一般的な山盛りご飯の倍はありそうな高さだった。

仰天しながらも跡部は帝の真似をして他の器の物も口にした。
料理には味付けがしていないようで自分で塩を付けたりするようだ。
これも文字通り味気無い物だったが、どんなゲテモノが出るかと不安だったから意外とマトモで安心した。

山盛りご飯は3分の1も食べられなかったし、おかずも味気なかったが、帝が後で菓子をやろうと約束してくれたのが嬉しかった。


***



食事や儀式の時間以外は比較的自由な時間もあるらしい帝は跡部に物語の絵巻物などを見せたり、約束通りに菓子を運ばせたりしてくれた。

外で楽しそうな声がしたので尋ねると、あれは青年貴族が蹴鞠をしているのだろうという。
サッカーみたいな物を想像したが、相手に上手に渡すのが決まりらしい。

跡部もやりたがったが、帝は「瑠璃はまだ子供だから彼らとやるのは早いよ」と笑ってそれは許してくれなかった。
だが、元々毎日テニスをしていたから、せめて何か運動をしたかった。


「では乗馬はどうか。お前に似合う馬を選んであげるよ」
「本当に!?前は馬を飼っていたんだ。嬉しい!」

「それに漢文などの学問や弦楽も習わせてあげよう。それに手習いもするとよいよ。ここに暮らすには必要な事だからね」
「うん、やりたい。主上がいない時は何もする事がないから退屈で仕方ない;」


すると、近いうちに内裏を案内してくれるといい、各殿舎に住む高貴な女性にも会わせてくれるとも言った。


『お妃様みたいだけど、何人もいるみたいだ。そういう国もあるよな…』


まだ見ぬ彼女達が帝のように優しいといいな…と跡部は思った。




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