平安絵巻

□▲●「泰雅」
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…翌朝。


跡部が起きると着物がぐっしょりと濡れていた。

布のおむつは無いよりはマシだが完全に漏れを防ぐ事はできず、今朝も畳まで濡らしてしまっている。
もう幾日も続けておねしょをしている跡部は泣きべそをかき、女房が宥めながら急いで湯殿に連れていった。



跡部が麗景殿に入るにあたり殿舎内の北側に新しく用意された湯殿で綺麗に…髪までしっかり洗われて浴衣姿で出てくると、庭先にまさかの来訪者がいた。


「やっ…泰雅様!?;」

「おはようございます。ご機嫌いかがですか。瑠璃の神子」

「おはよう;今からお仕事?
確かに来てっていったけど、こんな朝早くから庭に来るとは思わなかった;」

「いえ、宿直番でしたので、退出するところです。神子様は毎朝お湯を使われるとは聞いておりましたが、なるほど…それで清らかなのですね」

「いや、俺のいた世界だと普通だから…;」



…と、その時。
奥の寝所の方から下男の声が聞こえてきた。


「おい、そっちを持ってくれ!」

「おう!しかし…このところ毎日続けてだな。もう何日になる?」

「さあ…五日か…いや六日だったか?それより畳の具合はどうだ?」

「…ん。ああ、これなら大丈夫だ。大して中までは濡れてない。これなら昼まで陽に干しておけば乾いてしまうさ」

「そうか。まあ、おむつをしてらっしゃるそうだからな。助かるよ」


そんな事を言い合いながら畳を担いで出てきた下男達は、跡部にも泰雅にも気づかずさっさと行ってしまった。


泰雅は呆気に取られながら見送り、高い位置にいる跡部を見上げた。

跡部はといえば、思いがけず泰雅におねしょの事を知られてしまったショックで可哀想に顔も上げられずに小さな身体を更に小さく縮こませていた。

下男達の会話と跡部の様子から泰雅には濡れた畳の原因が何となく予想できたのだが、あえて跡部に訊いてみた。


「あの…もしや瑠璃様は夜のご粗相がまだ…?」

「言わないで…!(涙)」


跡部はその場に泣き崩れた。





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