平安絵巻
□△「藤壺と梅壺」
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その次に向かったのは藤壺とも呼ばれる飛香舎だった。
「おお、瑠璃やっと来たか。女御がお前が来るのを楽しみに待ってくれていたよ」
帝から念のためにともう一組贈られていた衣装に着替えた跡部が到着すると、女御が笑顔で迎えてくれた。
「初めまして、瑠璃様。これからよろしくお願いいたしますわね」
こちらは内大臣の血筋の姫君で、弘徽殿より穏やかな性質のようだ。
跡部の髪や瞳を見ても、驚いた顔はしたもののすぐに笑顔を見せた。
「萌黄色のご衣装が似合われてお可愛らしいこと。主上がお選びになりましたの?」
「ああ。先ほどまでは二藍を着ていて、それはそれで似合っていたのだがね(苦笑)」
「あら、なぜお召し替えなさいましたの?」
「それが…弘徽殿で粗相をしてしまったのだよ。こちらへ来るのが遅れたのは濡れた衣装を取り替えるためでね」
「まあ…///」
「貴女には初めに話しておこうか。瑠璃は粗相をしてしまうことがとにかく多いので、遊びに来た時などもうっかりしてしまうかもしれないが、どうか許してやっておくれ」
「ええ。それは仕方がありませんわ。好きでなさるわけでもないでしょう。瑠璃様、今はまだ大丈夫ですか?」
「はい…ここに来る前にもう一度ちゃんとしてきました///」
「はは…(笑)とにかく、その他の事では覚えも早いしとても良い子だから可愛がってやっておくれ」
「ええ。仲良くいたしましょうね、瑠璃様」
藤壺の女御は細やかな気配りをするしっかりした女性で、跡部にも分かるような楽しげな話もしてくれた。
別れ際にも「またいつでもおいでになってね」と自分から言ってくれたので跡部はホッとした。
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「藤壺の女御様は優しい人で良かった! 確か、あともう1人会うんでしょう?」
「ああ。次の局に居られる方は瑠璃と年の近い方だよ。元気な方だから大人しい瑠璃は気圧されないといいのだが…(苦笑)」
「そうなんだ…;」
跡部は元々女の子が…特にけたたましい女子は苦手なので、またちょっと不安になった。
「そういえば、弘徽殿様や藤壺様はいくつ?かなり年上なんでしょ?」
「ああ。弘徽殿の女御は私と同じ21才で藤壺の女御はその一つ下だよ」
「ふぅん。10才も年上だったんだ。じゃあ大人っぽいのも当たり前だな…」
帝は「年の話は女御達にしてはいけないよ」と笑った。
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