平安絵巻

□△「弘徽殿」
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…それから五日後。

その日は朝からよく晴れていた。
昨夜おねしょで濡れた神子の着物もよく乾くだろうと、女官達もひとまず胸を撫で下ろす。

だが、今日はまだまだこれから大変な事があるのだ。
食事の後で帝の妃達と跡部が初対面するのだから。


入浴も洗髪もいつも通り朝に済ませた。髪は短いのですぐに乾く。
それから、ひとまずの着替えと洗顔を済ませて、今日の注意を復習してから帝と共に食事を取った。

今日は今のところ着替えが必要となるような失敗は無い。
この五日間で跡部の排泄のタイミングをだいたい把握した女房達により、早め早めに世話をされているからだ。

日増しに失敗が減っているので今朝は帝からもとても褒められ、后妃達に会う緊張のあった跡部は少し気持ちがほぐれた。


「…しかし、瑠璃はなぜこの衣装なのだ?今日のために新しい物をまた作らせただろう?」


眉を寄せる帝に女官がきっぱりと答える。


「大事の前にもし…という事もございましたので。瑠璃様にはこれから急ぎお召し替え頂きます」
「そうか…そうだな(苦笑)」


要はハレの日の為の衣装を、いきなりお漏らしで濡らされては大変なのでまだ着せずにおいたのだ。
帝もそれを察して笑った。




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