平安絵巻

□△「天空から現れた神子」
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…時は平安時代。

いや、平安時代に非常に似通ったパラレルワールドなのかもしれないが、とにかくそこの景色は平安時代のようだった。


帝の住まわれる内裏の池に陽光が煌めくある麗らかな昼下がり、突如として空がパアァッと光り輝いたかと思うと、柔らかな光に包まれた何かがふわりふわりと降りてきた。

御所の者は皆…いや高層ビルなどないこの世界だから市中の者までもが皆、それを見上げ指差した。

御所では検非違使が弓に矢をつがえ、いつでも放てるようにと構え……しかし誰かの「光の中に人がっ!;」という叫びに動揺した。


「物の怪か!?;」と怯える声もあれば「このような昼日中にそれもあるまい。神か御仏の御使いだろう」と手を合わせるものもいる。

どちらにせよ、下手に扱えば祟りがあるかもしれぬというわけで、陰陽師が呼ばれ帝に意見を申し述べた。


…結果、帝の詔が下る。


「あれなるは尊き神の御使い。手出しはならぬ。危害を加えれば帝たる私にも、この国にも天罰が下ろうぞ」


そのうちに光は地に降り、輝きを失うと共に中にいた人の形をしたものがドサリと落ちた。

意識を失い倒れ伏すその者はまだ子供のようで、見たこともない着物を着ていた。

だが、何よりも人々の度肝を抜いたのはその頭髪だった。
その子供は薄い色彩の…鈍い黄金にも似た色の髪をしていたのだ。

ほぼ全ての者が黒髪…あとは年老いた者の白髪と僧侶の剃髪くらいしか見慣れぬ人々は恐れおののいた。

そして、子供が意識を取り戻すと、更にどよめきが大きくなった。

その瞳の色はこの国ではまず見慣れないものだった。
それは、紺碧の海の色をしていた。



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