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□△「雪の日」(入&跡)
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跡部が熱いシャワーを浴びて出てくると、ちょうど温かいカフェオレが入ったところだった。
「どうぞ」
「ああ」
ソファーに座ってカップを手にすると湯気が顔に当たって心地いい。
一口二口飲むと身体の中から温まる気がした。
だが、跡部は決まり悪そうに入江を上目遣いで見た。
「なに? 味とかおかしい?」
「いや、その…;」
「ん?」
「………お仕置きは?;」
入江はキョトンとし、やがて吹き出した。
「あははっ(笑)さっきのお漏らしのことかい?なんだ、お仕置きが無いから不思議だったの?」
いいんだよ、今回は。と入江は跡部の頭を撫でた。
「いきなりこんな天気になっちゃったんだもん。それをちゃんと歩いて帰ってきたからね。ご褒美にお咎めは無しさ。それとも無いと物足りない?(苦笑)」
「いいっ、無くて!;」
入江の手を払いのけて逃れた跡部に入江はまた笑いだした。
「こんなに寒くて学校では大丈夫だった?」
「ああ。榊先生にも褒められた。入江と二人暮らしを始めてから失敗が減った、って」
「それは嬉しいな。なんでかな」
「先生にも訊かれた。それで『学校で漏らすと家に帰ってお尻を叩かれる』って言ったら苦笑いされた;」
「プッ!(笑)なんだ、お仕置きの効果なの?」
「ああ!痛いの嫌だからトイレに行き忘れないように気を付けるからな!///」
「じゃあ先生にも叩いて貰ったらいいよ(笑)」
「それなら…『私がやると体罰だなんだと教育委員会や保護者会がうるさいからな』って残念そうに溜息ついてたぜ」
「なるほど(苦笑)」
「全く、冗談じゃないぜ。そんなにあちこちで叩かれてたまるかよ;」
跡部はカフェオレの残りを一気に飲み干した。
「あ、こら。もっとゆっくり飲みな。身体に吸収するのが追い付かなくてトイレが近くなるよ」
「あ…;悪い。気を付ける;」
「おや、今日は素直だね。…さて、今夜は温かい物でも食べようか。それで熱めのお湯にしっかり浸かって早めに寝ようね。朝方がまた冷えそうだから一緒に寝よう。二人分の体温があればきっとあったかいよ」
「…うん///」
魅力的な提案に跡部はまた素直に頷いた。
…雪はまだまだ降り積もっているが、部屋の中は暖かい空気に満ちていた。
(おわり)