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□△▲●「正月」(入跡同居設定)
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「あけましておめでとう、跡部くん。そろそろ起きる時間だよ」

今年初めて聞いた言葉は入江のそんなセリフだった。
ありきたりの正月の朝の挨拶かもしれないが、言ったのがミカエルでないのは初めてのことだ。
そう、俺も入江も年越しはお互い実家ではなく、この借家でしたのだ。

「初日の出見ようって約束したよね。あと初詣。さあ、まだ暗くて寒いけど頑張って起きて起きて!」

にこやかな表情で容赦なく布団を剥がしにかかる入江。
途端に身震いするほどの冷気が俺の全身を襲った。

「ちょっ、待て! 寒ぃっ!;」
「真冬の早朝だから当然だね。起きてリビングにおいで。暖めてあるからさ」
「…ちっ、分かったよ;」
「よしよし、新年からいい子だね。ところでオムツは?」
「………。」


とうとう核心に迫ってきたか;


起きた時から気づいてたズシッとした重み。
できるだけ快適にと作られていようともやはり不快感を伴う多量の水分を含んだソレ。

「…濡れてる。おねしょ…した;」
「そう。じゃあリビングより先にシャワーにしようか」

コクリと頷き、入江に手を引かれて風呂場に向かう。
想定内とはいえ元旦からおねしょ…。幸先悪ぃよな…。

でも入江はいつもそうだがちっとも責めない。
特に今日は正月早々だからかいつもより甘やかしてくれて、シャワーも着替えも手伝ってくれた。


「はい、オッケー。ちゃんと暖かくして出掛けようね。夜明け前だから冷え込みもハンパないだろうし」
「ああ。なぁ、オムツ…してっちゃダメか?;」
「ダーメ! 新年から気分一新して頑張ろうよ」

「だけどよ。日の出待つ間にしたくなったらトイレあるのかよ? 初詣だって参拝客たくさんいるんじゃねえのか? トイレがあってもすげー混んでたり汚かったりしたら俺…;」

『新年早々おもらしでズボン濡らすとか嫌だ…』


思わず俯いてしまった俺の頭を入江は優しげな手つきで撫でてきた。

「日の出を待つのは海辺とかじゃなくて近くの公園にするよ。あそこのトイレなら何度も入ってるから大丈夫でしょ? 神社も家の近くの小さいところだから参拝客なんてたかが知れてるよ。だからあんまり心配しないで、普通のパンツで行こう? それにオムツの中にするのだってオモラシだよ?」

俺は不安ながらも言うことを聞くことにした。
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