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□fall(完)
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一人の青年が秋葉原のとあるプラモデル売り場に立ち尽くしていた。

彼の名前はキラ・ヤマト。大学1年生。彼を一言で形容するとしたら、「オタク」。この一言に尽きる。

ひょろっとした体型に、流行遅れの大きめの洋服。そして黒縁眼鏡。特に眼鏡の存在感は大きく、顔の半分を覆い隠していた。

容姿もさることながら、彼は中身も正真正銘のオタクだった。
ジャンルはいわゆるロボットもの。特にゲームに関しては自らプログラミングを行なってしまうほど、大好きだった。
プラモデルを集めるのも好きだった。けれど、どうにも作るのが苦手でならなかった。
そのため一時からプラモデルを買うことを自身に禁じていたのだが、どうにもこのシリーズの作品、ストライクだけは欲しかった。そのためキラは悩みに悩んで30分ほど立ち尽くしていた。


一方で容姿端麗、眉目秀麗、このように形容される人間もいる。

彼の名前はアスラン・ザラ。

1年前に俳優として初出演で映画の主演を任され、今年の各新人賞を総なめにしている、現在もっとも名が知られている俳優の一人である。

その端麗な容姿と人当たりのよさから、女性を中心にファンは増え続けている。
映画以外にも、女性ものの化粧品のCMや雑誌のモデルなどもこなしている。
書店にアスラン・ザラが表紙でない雑誌が並ばないことはなかった。

ただしプライベートでは秘密が多く、それがまた女性ファンの心をくすぐるのだった。

そのアスラン・ザラが、今秋葉原でファンイベントを開いており、スタジオには人だかりが出来ていた。
あまりの人の多さに警備員の数が足りず、結局イベント自体は予定よりも短くなってしまったものの、騒動を治めるのに長くかかってしまった。

アスラン本人は次の仕事場へと向かわなくてはいけないのだが、どうにもファンがひく様子はない。
関係者は苦悩の末、アスラン一人を裏口から脱出させたのだった。
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