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□after fall (完)
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「アスランが変なんだよ。」
「だから、キラの自覚が足りないんだよ。」

二人は珍しく言い争っていた。

場所はキラの自宅。フリーダムとジャスティスを作成していたときだった。

アスランは晴れて両思いになれたキラとの甘い時間を楽しんでいたが(最近ではほとんどアスランがプラモデル作成を任され、キラはそれを見ているだけ、という時間を、アスランは甘い時間と言う)、やはり大学でのあの出来事を面白く思っていなかった。

「ならこうしよう。」
「何さ?」
「この前みたいな格好で、俺と一緒に放課後デート。」
「なっ…そんなの嫌だよっ。」
「なんで?」
「だって…恥ずかしいよ…。」
「キラと放課後デート、してみたかったんだけどな…。」

そう言ってアスランは悲しそうな表情になる。もちろん、キラがこの表情に弱いことは学習済みである。

「…一回だけなら…。」
「じゃあ決まりね。正しかった方が言うこと一つ聞いてもらえること。」
「そんなの聞いてないっ!」
「キラは自信ないの?」
「そういうわけじゃ…っ!」
「じゃあ決まり。」

途端に嬉しそうな表情になるアスランを見て、キラはやられたと悔しく思った。

日程が決まり、キラは朝から緊張していた。

なぜか仲のいい母カリダとアスランが共犯で、わざわざ写メまで送りあって決めた衣装を着るためだった。

「やっぱり可愛いわ〜!」
「…嬉しくないよ。」
「お父さんにも送ってあげなきゃ。アスラン君にも頼まれてるのよね〜。」
「バカアスラン…僕の写真なんか見ても、誰も喜ばないよ…。」
「あらあら、ぶすくれちゃって。少なくとも母さんは楽しいわよ?」
「…ヨカッタデスネ…はぁ…行って来ます。」
「行ってらっしゃい。アスラン君によろしくね!」

キラの今の格好は、耳まで覆う形の軟らかい毛糸でできたポンポンつきの菫色の帽子に、キャメル色のぴったりとしたトレンチコート、華奢な脚が見て分かるグレーチェックのスキニージーンズ、そして黒いムートンのショートブーツだった。
顔にはもちろん、いつもの眼鏡がなくて。
視界のよさに居心地の悪さを感じながら、キラは渋々と登校した。

登校中何人もの人々がその姿に目をひかれていたが、キラがその視線に気づくことはなかった。

その儚そうな美しい容姿に声すらかけづらかったのか、幸いにも大学に入るまで誰にも声をかけられることはなかった。
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