krk

□泳ぎ疲れた私を救って
2ページ/3ページ


 黄瀬涼太と友人としてのスタンスを守り続けて早1週間。友人からは「まるで主人と犬みたい」と笑われた。
 誰がいつ、こいつの飼い主になったよとつっこみながら今日も屋上で昼食を摂る。その途中の廊下で最悪にも元彼に会った。

「……げ」
「元彼にげってなんだよ」
「いいじゃん、もう何にもないんだから」

 元彼は以前と変わらない表情でこちらを見てくる。今思えば、一応こいつが好きだったんだな。自分でも馬鹿なくらいにベタ惚れだった。

「噂で訊いたけど、お前黄瀬と付き合ってんの?」
「はぁ? 何それ、冗談? どうなったらわたしと黄瀬が付き合っているように見えるの」
「別に。噂で訊いただけだし。俺が振っておいてなんだけど、平気そうでに良かった」

 ふっと目を細めながら笑う。嗚呼、懐かしい笑顔だ。ちょっと前まではその笑顔をわたしに向けてくれていたんだと思うと切ないな。
 以外にもわたしって、未練がましい性格してる。

「そうだね。むしろ、付き合う前より充実してるかも」
「このやろ……まぁ、いいや。互いに幸せならいいぜ。じゃぁな」
「……二度とくんな、ばーか」
「こっちの台詞だ」

 元彼と再会して会話をして、屋上へと足を進める。本当にもう、何もない。だって、あいつの笑顔にはドキドキと胸が高鳴ることなんてないんだから。

 屋上の扉を開けて柵にギシリと寄りかかって、お弁当の蓋を開ける。
 おかずに箸をつけようとした瞬間に屋上の扉が開いた。誰か来たのかと思い顔を上げるとそこには黄瀬が苦しそうな表情で立っていた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ