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□青春謳歌はお嫌いですか?
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 わたしには自慢の彼氏がいる。それはこの海常高校バスケ部主将の笠松幸男だ。学業も運動もできるし、友人関係も良好だ。しかし、彼には問題があった。それは――

「笠松君、数学のノート集めてるんだけど今出せる?」
「お、おう、大丈夫だ……」

 教室で女子のクラスメイトが話しかけただけで顔を真っ赤にさせてしまう。そう、彼は女子が苦手なのだ。純真というかなんというか。バスケ一筋でやってきた彼にとって耐性がないのはまぁ、有り得ないわけではない。そんな彼はわたしとは普通に話せるが手を繋いだりはできない。
 今まさに一緒に帰ろうとしているこの瞬間も顔を林檎のように真っ赤にして硬直してしまった。

「幸男、手繋がない?」
「…………」
「幸男? どうしたの?」

 わたしが固まってしまった彼の顔を覗くとびくっと体をさせながら「……い、いや、その……」とはっきりしない口調で誤魔化された。彼女のわたしにはせめて慣れてほしいものだと思いながらわたしは溜息を吐いた。

「幸男はわたしと手を繋ぐの嫌?」
「ち、違う!」
「じゃぁ、繋いでくれる?」

 そっと、幸男の指に触れると彼の指がぴくっと震えた。手を繋ぐのやっぱ、嫌だったのかなと触れかけた手をわたしはそっと、引っ込めた。


「……ごめん」


 やっぱり、嫌がることは無理矢理させてはいけないと思い、わたしは謝ると幸男の手がわたしの手をぎゅっと握ってきた。ふとどうしたのだろうと彼の顔を見ると顔を真っ赤にさせながら足を止めてゆっくりと口を開いた。

「その、俺はこうゆうことは疎いからお前がしてほしいこととか全部は理解できないけど、なんていうか……」

 手を握れらたところからじんわりと伝わる熱が静かに伝わってくるのを感じる。多分、わたしの顔も真っ赤になってしまっているのかもしれない。幸男のがうつったのではないかと思いながらいると幸男が手を強く握ってきた。

「幸男?」
「俺さ……まだ、こうゆうの本当に慣れてないけどさ、ちゃんと渚のこと見てるから。それに渚のこと、す、好き……だからさ……」

 目を少しだけ逸らしながらもわたしが欲しいと思ったことを言ってくれる幸男にわたしは顔に熱が集まっていくのを感じた。もう、真っ赤になっている顔がさらに熱くなって心臓がドキドキとうるさい。

「わたしやっぱ、幸男のことすっごい好き!」
「……! な、いきなりそんなこと言うなよ! 照れるだろ……」
「ふふ、幸男顔まっかー」

 わたしがふざけたように笑うと「うるさいっ!」と幸男が背中を向ける。けれど、手は離さないままだ。
 少しだけ前進したわたし達の関係を胸に抱きながら今日も二人で歩んでいく。






(青春謳歌は前進中です)




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