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□サヨナラの代わりの自己犠牲
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 うざいくらいに真っ直ぐな瞳であいつは俺の傍にいた。どんなに俺が突き放してもあいつは笑っていた。

「花宮先輩、また怪我してます。今、救急箱持ってきますね」

いつだって馬鹿でうざくて。それでも俺は本気であいつを突き放すことはできなかった。
何故かはわからないがあいつの真っ直ぐなところが嫌いでたまらないのに傍にいないと調子が狂う。
でも、ある日あいつが部活を休みがちになった。今吉さんに癪だが訊いてみると親戚の用事で暫く、学校を休むことになったらしい。あいつは部活どころか学校にすら来ていなかったのだ。

それから今吉さん達が卒業し、俺が3年に進級する頃、卒業式で久しぶりにあいつと学校で会った。

久しぶりに見たあいつは哀しげな笑顔を浮かべて俺に「わたし、花宮先輩の傍にいれて良かったです」と言った。その笑顔にいつもの馬鹿さはなかった。

そして桜が咲き誇る中、あいつは春が来て役目を終えて消えゆく雪のように俺の前から消えていった。




――――――

花宮とその後輩の話
驚きの短さ!
 

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