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□言葉はため息に変わっていく
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 好きな人と話すたびに素直になれないのはよくあるパターンだろう。素直になれればどれだけいいと思えば思うほどにわたしは傷ついていく。

「いつも思うんだけど、あんたってホモなの? いっつも黒子っち、黒子っちって可笑しいと思うよ?」
「はっ、君の方こそ桃っちにべったりでレズなんすか?きもいっすよ」

 バチバチと火花が散っている。火花を散らしている男女二人は周りがさっと、離れていってしまうほどに荒れている。

「わたしとさつきちゃんは純粋に友達だもん! あんたにそんなこと言われる筋合いなんてないんだから!」
「それはこっちの台詞っす! 俺と黒子っちだって仲の良いチームメイトっすよ!」

 互いに自分の意見を譲る気配がない。第三者からすれば不毛かつくだらないことなのだが、本人達は至って真剣である。

 彼らが一度、出会えばこのような喧嘩もとい言い合いは日常茶飯事。廊下等でこんなことをしない日は珍しくないと言えるほどだと有名だ。

「やっぱり、あんたとは何かも合わないわね」
「そうっすね。俺、君とだけは一生、馬なんて合いたくないっすわ」

 二人は互いを軽蔑しながら背中を向けるとそれぞれの教室へと戻っていく。



「さつきちゃんー! どうしよう……また黄瀬君に酷いこと行っちゃったー!」
「またなの? 本当に渚ってば素直じゃないなー」

 先程、言い合いをしていた男女のうちの女子生徒、霧宮渚は同じクラスで友人の桃井さつきに泣きついていた。
 言い合いをしていた男子生徒、黄瀬涼太に酷いことを言ってしまったと嘆いていた。

「どうしても素直になれなくて……黄瀬君を見るといつも言っちゃうの。どうしたらいいんだろう……」
「うーん……」

 さつきは目の前の友人を見つめながら頭を抱えていた。目の前の項垂れている友人は黄瀬と言い合いの喧嘩をしているがその実、彼に恋心を抱いている。しかし、どうしてかいざ彼と接触すると素直になれずに喧嘩へと発展させてしまう。

 さらには相手の黄瀬も渚のことが好きなのだ。つまりこの二人は両方片思い状態だ。素直になれないところを無くせば彼らはいつでも恋人同士になれる。
 それができずに日々は過ぎていくのだった。

「こんな状態がこれからも続いたら話せなくなるまで嫌われちゃう……」
「大丈夫だよ! 渚ちゃんのことを本当に嫌いなわけないじゃない! きーちゃんだって本心で言ってるわけないもの」
「そうかな……」

 どう慰めても暗い表情を浮かべるばかりの渚にさつきはため息が出てしまう。どうして、こんなにも素直になれないのだと。
 大切な友人に幸せになってほしいと願うがこればっかりは本人達にしかどうすることもできない。

「はぁー……」

 今日もまた、ため息が漏れるのだ。




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