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□サマーインユー・アイラブユー
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8月も今日で終わる。しかし、夏はまだ終わる気配を見せない。
蝉の鳴き声が止まない中、わたしは熱気立つ場所にいた。そこは屋外でしかも、ストリートバスケをする場所である。
何故、わたしがこんなところにいるかには理由があった。
「だ〜か〜ら〜、何でわたしが青峰のバスケに付き合わなきゃいけないのさー」
「何でって、そりゃお前がゲームで負けたら一つ、言うこと聞くっつたからだろ」
「だからって、バスケはないでしょー。どうせ、明日から部活でやるんだし」
今日は8月31日。明日からは夏休みが終わり、2学期に入る。休みの間も何日かは部活があったがお盆からは無くなり、それぞれ自主練習のみだけとなっていた。
部活でバスケをしない間はストリートで黒子君や黄瀬君達とよくバスケをしている。だが、今日はあいにくと黒子君達の予定が合わず、わたしが彼のバスケに付き合わされている。
いくら、わたしが女子バスケ部に入っていたとしても相手は男でしかも、キセキの世代のエースだ。勝率なんてどう足掻いてもわたしに傾くことなんてない。
「もー! 青峰に勝てるなんてちょっとでも思ったわたしが馬鹿だった!」
「はっ、今更気付いたって遅いぜ、渚」
ムキになって必死に青峰に食らいつきすぎて、肩で息をするほどわたしの体力は消耗していた。大体、1on1ならともかく、普通のテレビゲームですらあいつに勝てないとかわたしはどんだけだ。
「まぁ、流石に俺も疲れたわ。渚、ポカリくれ」
「ん、どーぞ」
「サンキュ」
ストリートに来る前に自販機で買ったポカリを差し出して、ベンチに二人で座る。
暑い日差しが降り注ぐ中、さわさわと時折吹く風が気持ち良く、汗がひやりと首筋を通るのを感じる。
夏休みも終わりかーと改めて思っているとふと、何か大事なことを忘れているような気がした。
今日は8月31日で夏休み最終日。何の祝日でもない。しかし、何かはあったような気がしてならない。
「あー!」
「んだよ、いきなりでっけぇ、声出して」
「今日って青峰の誕生日じゃん! すっかり、忘れてた!」
「そういえば、そうだったな」
そうだ、今日は青峰の誕生日だ。夏休みということもあり、だらだらと過ごしていたら完璧に忘れていた。今から、何かをするって言っても何も思い浮かばない。
「青峰は何か、欲しいのとかある? それとも、やってほしいこととか……」
「あー? 別に欲しいもんとかねーよ。誕生日だからって別にんなことしなくていいっつーの」
「でも、なんか青峰に誕生日らしいことしてやりたい」
折角の誕生日を何もしないまま終わらせてしまうなんてもったいない。わたしに出来ることで青峰を祝えたらいいんだけど、当の本人は「特にねーよ」と言い始めるし。
うーんと唸っていると青峰に急に頭を撫でられた。
「別に俺は物とか欲しくねーよ。ただ、お前といれればいいし」
「わたしとなんかいても楽しいこととか少ないよ?」
「俺がいいって言ってんだからいいんだよ」
そう言ってわしゃわしゃと頭を撫でられて笑う。太陽の光が青峰の笑顔に重なって、余計に眩しく見えた。
誕生日は青峰で祝われるはずなのはわたしじゃないのに、なんだか、わたしが幸せにされてしまった気分だ。
「わたし、青峰のこと好き!」
「俺も」
誕生日おめでとう!
サマーインユー・アイラブユー
(夏の太陽よりも君に恋をした)