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新緑が青々と茂る美しい森。
そこは鬱蒼としていながらも、木々の間から漏れる太陽の光でとても明るかった。
−ガラガラガラッ
ちょうど真上の太陽が東に傾きかけた頃。
森を一台の荷馬車が歩いてきた。
ろくに人の手の入っていないでこぼこ道を、少々大袈裟な音を立てて、荷馬車はゆっくり進んでいく。
荷馬車には、二人の青年が乗っていた。
一人は馬の手綱を握り、もう一人は本来荷物を置くべき荷台に寝そべっている。
「ヒマだなー」
寝そべっている、金髪の青年が言った。
彼の橙色の瞳は、光の加減でキラキラと緑色に色を変える独特な色合いをしていた。
「ヒマなのはいいことだぞ、レイン」
呆れた顔でもう一人の黒髪の青年が答える。
「でも、」
レインと呼ばれた青年はつまらなそうに欠伸をした。
「やっぱ魔物くらい出てこなきゃ刺激ないなー」
「レイン…」
聞いた途端青年は眉間にシワをよせ振り返った。
いつもは優しい青緑の瞳がレインを睨む。
慌てて起き上がりながらレインは苦笑いした。
「じょ、冗談だって、ホタル!本気にすんなよー!」
「嘘つけ、絶っ対っっ!本気だったくせに!」
「う…っ」
この二人は昔からの幼なじみで、とても仲がいい。
ホタルの方が二つ上なのもあり、時には兄弟のように、時には無二の親友として、幼い頃から当たり前のように一緒に育った。
成長した今でもそれは変わらず、昔しつけられた名残なのか、青緑色の厳しい瞳に睨まれるのがレインは苦手だった。
「だ、だってさ〜!折角旅に出る前の最後の仕事だっていうのに、つまんないなんてイヤじゃんっ!」
子供じみた言い訳をするレインに、ホタルは溜息をつく。
「もうすぐ嫌でもつまらないなんて言えなくなるから、それまでは我慢しろ」
「…へーい」
唇を尖らせ、レインはまた寝っころがり、ホタルも前を向いた。
気持ちのいい追い風が、辺りの木々を揺らし、二人を追い越して行く。
レインは、鮮やかな緑と快晴の空に、思わず笑みを零した。