戀〜それはイトシイトシトイフココロ

□錯覚
2ページ/25ページ

忠成も口にしてみたものの、雅嗣が賛成するとは初めから思っていない。
言ってみれば、勉強嫌いの雅嗣に対する嫌がらせのようなものだ。
予想とおり、キャンキャンとムキになって反論してくる雅嗣の単純さには笑ってしまう。

実際、一学年180人ほどが夜に行うレクリエーションといえば限られてくる。
その上、他に娯楽がない場所で、宿泊施設の近所に心霊スポットがあれば、超常現象が好きな雅嗣じゃなくても肝試しを企画するだろう。


「わかった、わかった。
それでコースはどうするんだ? 屋敷の中に入ってもいいのか?」

「…なんでお前はいちいちムカつく言い方をするんだよ。
えぇと、屋敷は鍵が掛かってるから入れない。
コースは屋敷の周りを一周する感じ。表門から入って、グルッと回って裏庭に行く。
前もって裏庭に名札か何かを置いておいて、それを持ち帰ることにしようかと思ってる」

まるであしらうような忠成の口調に引っ掛かりを覚えつつ、雅嗣は事前に考えておいたルールを話す。

「脅かし役は用意しないのか?」
「いらないだろ。学園祭でお化け屋敷やるわけじゃなくて、本物が出るって噂の場所なんだから」

(本物…ねぇ)

霊を信じていない忠成にすれば、雅嗣の言い分は呆れるばかりだが、一通りの段取りを考えてくれたことは助かった。
何も考えていないくせに、反対だけをするのも気が引ける。

「本物って、ここはどういう幽霊が出るんだ?」
「はぁっ!? そんなの来る前に調べとけよ。ホント、やる気がないんだから…」

文句を言いながらも、好きな話題なので雅嗣は嬉しげに説明を始めた。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ