戀〜それはイトシイトシトイフココロ

□錯覚
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枯れた蔦が壁面を縦横無尽に走り、庭の雑草は平均的な男子高生の腰あたりまで生い茂っている。
今はまだ日没まで間があるが、夜になれば何かが出て来てもおかしくない雰囲気だ。
近所の子供たちにとってはちょうど良い肝試し場所である。


草むらを歩く二人の少年は、遊びに来たわりには不機嫌そうだった。

「…ったく…高校生にもなって肝試しなんてマジかよ」
いかにも呆れ果てたという口調で、詰まらなそうに吐き捨てたのは伊達忠成(だてただなり)。
スラリとした引き締まった長身の上に、若武者を連想させる涼やかな容姿が乗っている。

「うるせえな! 仕方ねえだろうが。この辺りには他に目ぼしいスポットがないんだよ。
文句があるなら、こんな何もないところでの校外学習を決めた学校に言え」
忠成の数歩先を歩いていた須崎雅嗣(すざきまさつぐ)が、黙っていれば儚げな可愛らしい顔で怒鳴り返す。


「たかが一泊の校外学習で、わざわざ余興をやる必要はないだろ。
お前のくだらない趣味に俺を巻き込むな」
「俺だってお前なんかと一緒にやりたくねえよ。
お前が俺ばっか目の敵にするから、センセが少しは仲良くしろとか、キモいこと言い出したんじゃねえか」
「問題を起こすのがお前だけだからだ」
「とにかく! 今回は実行委員って言われてるんだから、肝試し以外に何かあるなら言ってみろよ!」
「宿泊先の会議室なんかで、補習とかやればいい」

本気で面倒くさそうに忠成が出した提案に、雅嗣は柳眉を吊り上げて食って掛かった。


「あほーっ! 自由時間に勉強なんかできるか!
参加者全員ブチ切れるわ!」

 
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