Vassaload.
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おまけ
「チェリー」
椅子に座りため息をついていると、不意に頭上から名を呼ばれ見やると風呂上がりのマスターが私を見ていた。
「さっきは、悪かったな」
「いえ…」
苦笑いをしながら頭をなでてきた。
私は、短く返し視線を外す。
その私の様子を見てマスターは小さく息を吐くのがわかった。
「…いじけてるのか?」
「違います。何故私がいじけなくてはならないんですか」
「だぁってよー…って、何だこれ」
顔を覗き込んでくるのがわかると私は鞄から白い紙袋を取り出して強引に相手に手渡して立ち上がりベッドへと向かい歩く。
渡されたものがわからないらしく、驚いたように私に問いかけてきた。
「お忘れですか?約束のものですよ」
「…あ…お返しか?」
えぇ、とうなずきながらベッドに腰掛けて足を組む。
渡せるような雰囲気ではなかったが、渡さないともったいない。
折角仕事帰りに買ってきたのだから。
マスターは満面の笑みを浮かべながら私の隣に座ってきた。
「…サンキュ。永久保存しちゃおっかなぁ」
「やめなさい、いくらなんでも食べ物なんですから今すぐに食べて下さい」
「じゃあじゃあ、口移しで食べさせてくれよーぅ」
袋を開けてクッキーを一つ手に取ると私の口元にそれを寄せてきた。
気付けば先ほどの刺々しい雰囲気は驚く程なく、いつものマスターだった。
「どうしてそうなるんですか。嫌ですよ」
「酷いっ!俺の血は口移しでも飲めるのにクッキーはダメだなんて…」
わざとらしく肩を落としながらマスターはクッキーを食べていた。
というか、口移しで血なんか飲んだことないでしょう!
「誰が!いつ!何処でそんなことをしたというんですか!!」
いつだろうなぁとケラケラからかうように笑うマスター。
もう機嫌は直ったのだろうか…
聞こうと思うが、また機嫌が悪くなっては困るので今は聞かないでおこうと、
マスター自ら率先して教えて下さることを気長に待とうと、そう心の中で決意した。
本当のEND