Vassaload.

□April
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今日はいつもより早く帰れた。
依頼を終えてアパートへと向かう足取りは、何だか軽い…

「べ、別に嬉しいわけじゃ…」

自分の心に言い訳をしながらも歩みは段々と早まる。
最終的には走るように進んでいた私の目の隅にふと洋菓子屋の明かりが見えた。
歩いていた(正確には走っていた、か…)足を止め其方へと体ごと向いて見やる。

たまには、お土産も良いだろう…

とか考えてしまった私をお許し下さい…
首に下げてる十字架を握り締めると心の中で祈りを捧げた。

ケーキを二切れ買った。
小さなボックスを持ち再び帰路へとつく。

アパートの扉を開けて先ずはマスターを探す。
風呂…には居ない。
当然リビングにも居ない。
だとすれば…
持っていた荷物をリビングのテーブルに起き寝室へと向かい扉を開ければ探し人を見つけた。

「マスター、まだ寝てるんですか?いい加減起きて…」

日も落ちて暗くなりかけている外、顔は確認出来ないが体の位置はわかったので、肩を掴んで揺らそうとしたときだ。

「……マスター?」

ねっとりとした感触。
自分の手のひらを見ると赤い色に染まっていた。
何が起こっているのかわからなかった。
パニック状態でマスターの体を自分へと向き直らせた。
すると、胸元には大きな切り傷、頭と口からは血を流し、顔色は青白かった。

「マスター!一体何があったんです!マスター!?」

体を揺らし頬を叩いてみるも反応がない。辺りを見渡すと寝室の窓が開いていた。
あそこから犯人が…

パニックなのと怒り、悔い、悲しみが入り混じり気付くとマスターの体を強く抱きしめていた。
マスター…もう少し早く着いていれば…

後悔の渦に飲まれていると耳元からクスクスと小さく、だが笑いを堪えるかのような笑い声が聞こえてきた。

その笑い声が私の冷静さを取り戻させてくれた。
改めて考えて…

傷は胸なのに何故無傷の肩に血液があるのか

死体はこんなに暖かかったか…

それにこの匂い…

…………ケチャップ

「…マスター」

「……やっと気付いたか」

体を離してクスクスと面白そうに笑いながらマスターは言う。
ちょっ…笑い事じゃない!
私がどれだけ心配したと思ってるんだ!この人は!

「今日はエイプリルフールってやつなんだろ?んで、ちょこーっと遊んでみたわけ」

「………」

「これ、この傷のテープ。雑貨屋に売っててさ、ついついやりたくなって…」

ヘラヘラといつもの口調で言うマスター。
…何もわかってない、この人は。
私は咄嗟にマスターを再び抱き締めた。
その行動に驚いたのかマスターは「どうしたんだよ」などと問いかけてくる。
どうしたもこうしたも、このままマスターが居なくなってしまうのではと考えて怖くなった。
嘘でもこのようなことはしないで欲しい…心臓がいくつあっても足りない…

「…チェリー?」

「…何でもありません。早くシャワー浴びてきて下さい。ケチャップ臭い」

そう言って私はマスターから離れリビングの椅子へと腰掛ける。
なんだか…どっと疲れたような…

「なんだよー、チェリーだって俺のこと抱き締めたからケチャップだらけだろー?あ、この際だ一緒に入「りませんのでとっとと洗い流してきなさい。ケーキ、あげませんよ」

「じょ、冗談だよ。ケーキくれよな」

マスターの言葉を遮るように、静かな怒りをぶつけるとマスターは苦笑いを浮かべながら風呂場へと姿を消していった。
全く…洒落にならないことばかりするんだから…
あなたにもしものことがあったら、私はどうしたら良いと言うんです…
大きな、深いため息をつく。



















が、後に同じ光景が現実となり目の当たりにするとは、この時思いもしなかった。













END

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