Vassaload.

□destiny
1ページ/1ページ

クリスだけは

絶対に守る…

そう決めたんだ















destiny





















「……今頃、どうしてっかなぁ」

無数の蝙蝠が路地裏へと逃げ込むと人の姿へと変貌し、その人陰が壁に寄りかかりながら呟く。
気掛かりなんだ、クリスのことが。
彼奴の、バリーの罠にハマっていないだろうか…ただ其れだけが不安で…
荒い息をしながら目を閉じる。
………気配はまだない。だが見つかるのも時間の問題だな。

「いってぇ…」
「派手にやられてんなぁ」

わき腹にある大きな傷を見れば痛み口にしていると、不意に聞こえた声に警戒し振り返る。
そこにはレイフェルの姿があった。

「……レイフェル」
「そう警戒すんなよ、バリーは今この辺りには居ない」
「わかってる、そんなこと。それよりお前のパートナーが心配してんじゃないのか?」
「あんたの所に行けって、言われちゃったから」
「あっそ…」

ため息ひとつ漏らすとその場に座り込み身体の回復を待つ。
最近は血を飲まなくなったからか、傷の治りがが遅い。
そんな俺の隣へと立つレイフェルが空仰ぎ見ながら呟く。

「……チェリーのこと、気にしてんだろ?」
「………」
「図星ね、チェリーなら大丈夫だよ。お前のこと、血眼で探してるみたいだけど」

あーやっぱな…
なんせ何も言わずに出てきちまったから怒ってんだろうなぁ…
探すなってあれほど言ったのに、帰ったらいじめてやろう。

「……話してないのか?バリーのこと」
「話して何になる…バリーの存在を知ったってどうにかなるわけじゃない」

バリーを殺すことは出来ない…出来ないんだ…
たとえ、クリスでも出来ない…
どうにか打開策を考えないと、こんなことばかり続けてたらこっちの身がもたんな

「…………つか、なんでお前がクリスのこと知ってんだよ」

そうだ、気付いてみるとクリスの今を知ってるのは俺だけなのに何で…

「……クリスを襲ったって言ったら?」
「お、お前ー!俺の大事なチェリーに汚れたことしやがったのか!!」

胸ぐらを掴みゆさゆさと揺すりながら追求する。
まさか、チェリーじゃなくなった…

「ま、待てよ!未遂だ未遂!あいつはきちんと拒んだ!」
「未遂……ってそれも駄目だろ!俺のチェリーの○○○まで握りやがって…俺だって触ったことないのに…」
「…妄想で触ることまで予想するってすごいな…」
レイフェルが最後に何か言った気がするがそんなのどうでも良い!
俺のチェリーが…チェリーがぁ…
俯きながら嘆いているとレイフェルが頭を撫でてきた。

「まぁ、クリスもお前を心配してんだよ…バリーって名前を頼りに探してる」

見つかりっこない。
バリーは色んな偽名を使ってる。
例え見つかっても…

「……クリスに、バリーの存在を明かしたら、どうなるだろうな」
「レイフェル…余計なことすんじゃねぇぞ」

ボソっと言ったレイフェルの一言が聞こえた。
咄嗟に胸ぐらを掴み睨みつけ言い放つ。





クリスにだけは


知られてはいけない


バリーにも


クリスの存在を


知られてはいけない


知られないためには…




























「お前、今死ぬこと考えたろ」

レイフェルの一言で我に返る。
いっそ、死んだらバリーに追われることもクリスの存在を知られることもない、そう考えていた。

「死んだら、悲しむ奴がいること…忘れたのか?死なせないよ、クリスのためにも」
「…何でお前がそんなこ……っ!」

胸ぐらを掴んでいた手を離しレイフェルを見やるも次の瞬間嫌な気配を感じ、辺りを警戒する。

「………お出ましだな。タイムオーバー、また何処かでな。クリスの情報、教えにきてやるよ」
「そりゃあ、ありがたいこったぁ…」
じゃあなと空へと舞っていくレイフェルを見ずに手のひらを左右に振り見送りながら冗談混じりに告げて立ち上がり辺りを見渡す。

どこだ…

とりあえず警戒はする、が無駄な足掻きだ…
いくら俺でも彼奴の、バリーの気配はわかっても何処に居るかまではわからない…
今も………

























「………探したよ…?…愛しのアディー…」

























そして、悪夢は繰り返されていく。



クリス、
ごめんな…………

まだ暫く、帰れそうにないわ…

願わくば、バリーに目を付けられないことを……





















END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ