Vassaload.

□mistake
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「…遅いな」

もうすぐ夜明け時刻。
ちょっと出かけてくると言って行ってしまったマスターがいっこうに帰ってこない。
日が沈んでからすぐのことだから、大体9時間は経っている。
ここ最近夜明け間近まで帰ってこないことが多くなってきた。
一体どこで何をしているんだか…
とその時。

「たっだいまーっと」

マスターがいつものように窓を開けて帰ってきた。
私は無意識に顔を上げて見やるも直ぐに視線を落とし再び本のページへと戻して冷静を装いながら問いかける。

「…最近、やけに帰りが遅いようですが何処にいってらしたんですか?」
「ん?最近知り合ったかわいこちゃんのところに」

かっ…わいこちゃん…?
まさか女性のところに…
いやいやあり得ない。
あの男喰家で女嫌いのマスターが女性のところになんか…
一人で混乱していればマスターは冷蔵庫を開けてガサガサと何かをしながら続けた。

「凄く可愛いんだぜ?俺のこと見つけるとすぐ抱きついてきてくれちゃったりして」

抱きッ…?!
…き、きっと男性だ。
というか私がそう思いたい。
でもだからってかわいこちゃんは…「今日はベロチューしてくれたなぁ」

ち、チュー!!?
私ですらほっぺにチューが限界だというのに堂々とそんな…そんな…

「あまりにも求めてくるもんだから俺のソーセージあげたら喜んで喜んで」

ソーセージ…
道の真ん中で一体何をしてきてるんだこの人はッ!!

「ベロベロに舐めたあと全部食べられてさぁ…「貴方という方は恥曝しということを知らないんですかッ!!馬鹿ですか貴方は!」

耐えきれず私は本を勢いよく閉じて立ち上がりマスターを見やりながら怒鳴った。
例え夜だからって道のど真ん中でそんな破廉恥な…!

「…なぁに怒ってんだチェリー」

いきなり怒鳴った私に驚いたらしくきょとんとしながら立ち上がり問いかけてきた。
その間抜け面、たまにイラッとするときがありますよ…
呼吸整え冷静なふりをして言い返す。

「…そんなにその方が良いならヴァンパイアにでも変えたらどうなんです?」
「な、何言ってんだよ。言ってることの意味わかんねぇよ」
「ご自分でお考え下さい」

再び座り足を組んで本を読む体制を作る。
つい、取り乱してしまった…
まさかマスターが私以外の方にそんなことをするなんて…
…って、私は何故こんなに悩んでいるんだ。

「なんだよ、犬なんかヴァンパイアにしたって邪魔なだけじゃんかよー」
「…………は?今、なんて…」

聞き間違いかと振り返りマスターを見やる。
い、今…犬って…

「だから、犬。ちっこい犬でさぁ、捨て犬みたいで腹空かせてるところにソーセージやったんだよ。そしたら懐かれちまって…」

ほらこれが…と小さめのソーセージを手に持って見せてくる。
犬は懐いたら飛びつく、ベロベロに舐める…

「………チェリー?まさかお前…」
「ち、違いますッ!何でもありませんッ」

呆然と見つめていると疑問を持ったのか近づいてくる。
私は全否定をするように視線をそらし背中を向けた。
なんということだ…
まさかこの私が…

「…ヤキモチ妬いた?」
「…ッ!!」

耳元でそう囁かれビクッと飛び跳ね相手見やる。
まぁ近くにあるから直ぐそらしてしまうんだが…

「…可愛いなぁチェリーは。犬に妬くなんて」
「ば、馬鹿なことを…私がそんなことするはずがないでしょう…」いきなりマスターに後ろから抱きしめられドキッとするも次の言葉を聞いてしまうと一緒に居たくない…
眼鏡を押し上げてから払いのけ立ち上がった私は歩き出して玄関に向かう。

「なんだよー、俺が悪いってのか?」

悪気がないのか私の後をくっついてきながらニヤニヤと笑って言う。
…何かよからぬことを考えているなこの人は…

「言い方が悪いでしょう、紛らわしい…」
「やっぱり妬いたんだな?そうだろ?ん?」

私の腕を引っ張り意地悪な笑みを浮かべたマスターはそう聞いてきた。
本当のことなんか…い、言えるわけがない…

「…妬いてません、行ってきます」

腕を振り払い睨みつけながら言うと私は部屋を後にした。
この私が勘違いをして、や、妬くだなんて…断じてありえない…
あーもうっ
顔があわせづらいじゃないですかっ!
…また暫く、断食でもしますか…
大きくため息をつきながらそう決意した私は、仕事の依頼を果たすべくアパートを後にした。



END…?


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