Vassaload.

□white 2
1ページ/1ページ


それは唐突に

なんの前触れもなく


「よっ!」
「お久しぶりです」


うるさい2人がやってきた。

「……なんで…ってまさかチェリル!」

2人を交互に眺めながら目をぱちくりさせているとハッと思い隣に居る相棒・チェリルを見やる。
当のチェリルは中身がなくなり氷だけになったコップをストローでズズズーと吸いながら視線を反らしていた。

私とチェリルはバカンスを楽しむためにハワイにきていたんだけど…

「チェーリールー…」
「だ、だって!レイフロさんならまだしもクリスさんに頼まれたら断れなくて…」

だからって…だからってぇ…
あからさまに肩を落としてうなだれるとレイフロが笑いながら近付いてきた。

「まぁまぁ、良いじゃないの。たまには俺らが来たって良いだろ?いつも邪魔しに来るくせによー」

腹癒せかッ
キッとレイフロを睨むもヘラヘラとした様子は変わらず…
くっそー…折角取れた楽しい時間をぉぉぉお!

憎悪を滲み出しながら睨み続けているとチェリーが鞄から何やら取り出して差し出してきた。

小さな紙袋が2つ…

「………何」
「何って、ホワイトデーですが」

チェリーは眼鏡を押し上げてチェリルの膝上に置いた。
ホワイトデー…あぁ、そういやバレンタインにチョコあげたっけか…

「まさかクリスさんからお返しがもらえるなんて…ありがとうございます!」

チェリルは置かれた紙袋を1つ手に取るとキャッキャと嬉しそうに礼を告げて開ける。
中からは動物の形をしたクッキーが出てきて更にテンションがあがるチェリル。
……こうみるとチェリルもやっぱ子供なんだよなぁ…

「有り難く思えよなぁ、チェリーが朝も早よからせっせと作ったんだから」
「え…何、これチェリーが作ったの?」

レイフロからの言葉に驚きに目を見張りチェリーを見やる。
マジ?こんなファンシーなもん作ったの?

「……貰ったものも、手作りだったなと思いまして。気に入らないなら返して下さい」
「いやいや、気に入ったよ。ありがとう」

礼を言うと照れたのかそっぽ向いて「どういたしまして…」と一言告げてきた。
うーむ…チェリーも可愛いな…

「おまっ…何照れてんだよ!俺以外にそんな顔を…」
「…では、仕事あるのでこれで失礼します」

レイフロがギャーギャー言う中冷静に言葉を遮ると軽く頭を下げて背を向けて歩き出していった。
…流石はレイフロの相方。
レイフロの扱い方が雑…

「ったくよー…まっ、そういうことだから俺も行くかな」
「行け行け、チェリルに集るハエ野郎めが」

シッシッと追い払うように手の平を振る。
はいはい、と空返事をして去る途中小さな箱を2つ私に放り投げてきた。

「……爆弾か?」
「俺も一応貰ったしお・か・え・し」

語尾にハートマークが付きそうなくらいの口調で言うレイフロに寒気を感じて身震いをした。
隣を見るとチェリルが呆れた様子で苦笑い浮かべていた。

「買ったもんだから味の保証はするぜ。んじゃーな」

言うと遠くで待つチェリーへと走って戻っていった。
2人の姿が見えなくなれば貰ったものを交互に眺める。

「……私、レイフロさんから頂いた物を先に食べようかと思います」

ふとチェリルが呟いたのを聞くと小さな箱の方をチラリと見て頷く。
確かに、チェリーの手作りクッキーは貴重だしなぁ…

「私もレイフロからのを先に食べるかな」
「クリスさんのは貴重ですからね」

あ、同じ事考えてたんだ。
さすがは私の相方。
一心同体、思考も同じってね。

"アイツ"以外で初めて貰ったお返し。
何やら今日は最悪だったけど、最高な1日だ。





ENT

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ