Vassaload.

□white 1
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「只今戻りました…」

仕事から帰宅すると、いつも出迎えてくれる騒がしい人物の姿がなかった。

「…マスター?」

風呂にでも入っているのだろうか…
そう思い風呂場へと行くも姿は無かった。
また一人で出歩いているのかあの人は…まぁ、外は暗いし明るくなる前には帰ってくるでしょう。
二日前から起きては出かけることが多くなったマスター。
一体、何処で何をしているのだろうか…
そんなことを考えながら私は、上着を脱ぎ椅子の背に掛け鞄を机に置く。
最近、ネガティブなことばかり考えてしまう。
このままマスターは帰ってこないのかもしれないとか、
何処かで真祖と言うことがばれて捕まってしまったのかもしれないとか…

「…くだらない」

右手を額に持って行きフッと小さく笑いながら呟く。
何を考えているんだか…
別に、寂しいわけじゃない。
ただ、その……食料…そう、食料がなくなっては私も生きてはいけませんし。
短く息を吐くと、歩み出してベッドへ向かいそこに座る。

「…本当に、馬鹿馬鹿しい…」

と、その時だ。
インターホンが鳴った。
時刻は夜七時を回っている…
こんな時間に誰だろうかと思いつつ立ち上がって玄関に向かう。
扉を開けるとそこには宅配員が立っていた。

「あ、ジョニー・レイフロさんのご自宅はこちらで宜しかったでしょうか?」
「…えぇ、何か?」

マスターの名を口にされ驚いた。
いやそれ以前に、マスターに宅配物なんて今までなかったのでそれに一番驚いてしまった。
これを…と手渡されたのは大きな薔薇の花束…

「差出人は…?」

差出人を聞こうと見やるとそこに宅配員の姿はなく、聞くことはできなかった。
花に気を取られて帰ったことに気付かなかったな…
取り敢えず扉を閉め室内へと戻りながら花束をじっと見やる。一体誰からなのかが気になる…と、数百はある薔薇の中に一枚のカードを見つけた。
手に取り見るとそこには

[愛するアディーへ、バリー]

と書かれていた。

「…バリー…?」
「…お、帰ってたのか」

不意に聞こえた言葉に窓を見やればマスターが飄々としながら入ってきた。

「お帰りなさい。何処に行っていたんですか?」
「チェリルんとこに…ん?何だその花束」

チェリルのところに一体何しに行ったんだこの人は…
花束を指摘されればカードを戻してマスターに差しだし受け取るよう促す。


「これ、貴方に」
「え、チェリーが俺に?嬉しいなぁ、そんな可愛いチェリーには俺からのアツーイちゅうを「何で私が貴方に送らなくてはならいんですか!届け物ですよ!バリーと言う方から貴方宛に!」
「…なんだって?」

いきなりマスターの顔が怪訝そうな表情に変わった。
声色も、いつもよりは低く何処か嫌そうな雰囲気だった。

「…ですから、バリーという方から貴方宛の届け物と…」
「バリーに会ったのか?」
「い、いえ、宅配員が届けて下さいましたが…」

そうか…と安心したようなため息を吐いて前髪を掻き上げながらベッドへと座るマスターが、私は不思議でならなかった。
"バリー"と言う名を聞いただけで取り乱すなんて…
一体、差出人とマスターはどういった関係なのだろうか。
「それ、捨てておいてくれ」
「…珍しいですね、女性からの贈り物を捨てるなんて」
「女じゃない」
「では一体…」
「お前には関係ない。とにかく、それは燃やせ。あと、また今度同じ奴から何か届いたら受け取るなよ。命令だ」

言うと立ち上がって風呂場へと歩き出してしまった。
怒らせて、しまっただろうか…

「あの…マスター。バリーという方のこと…」
「口にするな」

追求するために後を追い脱衣所に向かった。
すると私に背中を向けたまま機嫌の悪そうな声色で言ってきた。

「…マスター?」
「奴の名前を口にするな。胸くそ悪い…」

言い終えると風呂場へと姿を消していった。
あんなに機嫌の悪いマスターを見たのは初めてだった。
バリーとはどんな人なのだろうか…
マスターとは、どのような関係なのだろうか…
考えてみれば、マスターの過去とか、私は全く知らない。
私と出会う前は何処に居て、何をしていて、誰と居たのか…

「…何を、隠しているのですか?マスター…」

脱衣所に立ちすくみ俯いて私は、小さくつぶやいた。
その時初めて、マスターのことを深く知りたいと思った。
















貴方は私に

まだ何か隠しているのですか…?

教えては下さらないんですか…?

時折、貴方が何を思っているのか考えてしまう…


嫌いなはずなのに、こんなことを思うなんて…
何故だろうか…



END

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