Vassaload.

□Happiness《レイフロ》
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長くは続かないこの日々を


俺は、大事に生きていこうと


そう思えるような


相方に出会った…





















Happiness


「My body is your bread.
My blood is your wine.」



窓際に白いワイシャツに同色のデニム姿で窓枠に頬杖つく俺は煙草をふかしながら息子の帰りを待つ。
俺の息子はヴァンパイアハンターをしている牧師様。
自分の体を改造してサイボーグ化した彼奴はどんなヴァンパイアも倒せる自慢の息子。
なのに、彼奴自身ヴァンパイアだ。
で、そんな俺もヴァンパイア。
だからこそ俺は夜じゃないと行動しない。
だが今日は日は落ち太陽こそないものの、俺は何故か何時もより早く起きてしまった。

「私の身体は貴方のパン、私の血は貴方の葡萄酒…か」
「またそれですか」

不意に聞こえた声に振り返れば仕事から帰ってきた俺の息子、クリスが居た。
しかも嫌そうな顔をして。

「よォ、お帰り。早かったな」
「只今戻りました。対した依頼ではありませんでしたから。それより…」
「この格好か?」
が、クリスはそれだけではないと首を横に振る。

「…他に何があるよ」
「…サクラメント」
「それかい…なんだよ、別にいいだろ?言うくらい」
「言うのは勝手ですが、私の前では絶対に言わないで下さい」

言いながらコートを脱ぎ衣紋掛けに引っかける。
その様子を眺めながら煙草を銜える。

「お堅いなぁ、チェリーは。抱いてくれてる時は柔らかいのに」
「チャーリーです。何バカなことを言っているんですか。とっととその服を脱いで下さい」
「何でよ。なんの用事もないんだろ?まさか、今起きたばかりの俺を犯す「わけないでしょう!良いから早く別の服に着替えなさいッ」

へらりと笑いながら窓枠に寄りかかり相手を正面から見つめ右手の人差し指で自分で着ている白いワイシャツを指さして問う。

「別に着てても良いだろぉ?支障はないんだからよー」

と、俺が言い返すとキッと睨んできた。
珍しく、マジ切れ…?

「貴方が白を着ることが気に食わないんです」

………………。
って、スゴい失礼なこと言ったなこいつ…

「じゃあずっとこの格好でいよーっと。チェリーへの嫌がらせで」

言うと大きなため息をついていつも持ち歩いている鞄をベッドの上で開き何かをすると同時に俺の言葉に対し無視を決め込んだらしい。
俺はゆっくりとした足取りでクリスの居るベッドへと歩み寄る。

「ゲッ…遠いじゃねぇか。何で俺等が行かなきゃなんねーのよ」
「仕方ないでしょう、依頼人は直接話がしたいと仰っています」
「ったく、メンドーだなぁ」
「嫌なら残っても構いませんよ?」

くそぅ…あーいえばこう言う…こんな子に育てた覚えはないのになぁ…

「ここなら往復約一週間くらいかかるだろう。おまえ、俺が居なくて耐えられるのか…?耐えれなくなって人間襲っちまえば…っとわッ!」

にやにやと笑いながら銜えていた煙草をベッド脇にある棚上に置かれた灰皿に置き嫌みったらしく言ってやった。
が、いきなり腕を捕まれベッドに押し倒される形になった。

「な、何…」
「食い溜めすれば良い話でしょう?」

いや真顔で言うなッ
つかマジだこいつ…

「ま、待て!誰が行かないなんて行った!」
「…では来るんですね?」
「ったりまえだ!大喰いのおまえに食い溜めされたら一週間以上動けなくなるわッ!」

確かに…と納得の言葉を口にして含み笑いをした。
笑うところじゃねーよ…

「取り敢えず、夕食を食べさせて頂きます」
「お、おいっ…ッ!!」

2本の八重歯を俺の首筋に突き刺し真っ赤な血液を出すとジュルジュル音を立てながら俺の血を飲み始める。

「…焦るなよ…俺は逃げないぜ?」

ぽんぽんと頭をなでてやりながら苦笑いして俺は小さく呟く。
血を分け与えれば人ではなくなるっつーのは知っていた。
知っていて俺は、クリスに自分の血を分け与えた。
だから、クリスはヴァンパイアになっちまった。
んだけど、日の光浴びても砂になんないのよ。
これには流石の俺も驚きだった。
まさか俺の隷属からそんな奴が生まれるとは思っていなかったしな。

「…………」

いつまでも、こうしていられるわけではないんだぞ…?チェリー…

いつか俺は















俺は………















いや、考えるのはやめにしよう。

未来のことはわからん。
今を楽しまなきゃあな。

「クリス…」
「…何ですか?」

俺の首筋にかみついたまま、クリスは怪訝そうに聞いてくる。
その様子にフッと小さく笑めばクリスの耳元である言葉を小さく囁いた。
その言葉に驚いたのか、クリスは口を離し手の甲で血を拭いながら目を丸くして俺を見ていた。
暗かったからよく見えなかったが、微かに赤くなっていた。

「…何、照れた?」

からかうように笑いながら顔を覗き込んで首を傾げる。

「…て、照れてませんッ」

視線が合うとそっぽ向き俺から離れていく。
こりゃあ、新しい遊びを見つけちまったかな…?

「照れたんだろ?隠すなって!」
「隠してませんッ。というかついてこないで下さい!」
「チェリー、もう一度言ってやろうか?ん?」
「結構ですッ」

台所に向かう相手の後を追いながら言えば動揺したような口振りで返してくる。
が、んなの俺はお構いなし。
クリスの肩に手を置いて引き寄せれば今度ははっきりと言ってやる。


















「愛してるよ…」















なんて、俺が素直に言うと思う?
後から、「お前のペットがな」と付け足せば正面から右ストレートを真っ向から受けた。

この楽しい日々は壊したくない。
ずっと続けば良いと思うなんて、俺らしくないとクリスは笑うだろうか…



なぁ?



クリス…














END

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