▼Main

□桜散るころには
1ページ/4ページ




何度身体を繋げても

何度好きだと伝えても


重なるのは痛みだけで





もう、桜が咲く頃だ。



【桜散るころには】














「んん……っは、せんせっ、あ」

煙草のにおいが染みついた国語準備室。まだ肌寒いこの時期、土方はシャツだけの姿で甲高い声を上げていた。秘所にくわえているのは溶けてしまいそうなくらい熱い銀八の性器。周りに散らばる無造作に放ってある衣類。安っぽいソファの上。
奥を突き上げる度にあっあっと抑えきれない声をこぼす土方に銀八はたまらないと口角を上げ、額から伝う汗をぬぐった。

「もっ、もう、出る……ッ!」

「いいよ、出しな、……ん」

土方が果てると同時、性器を契るかのように強く締め付ける秘所に銀八も土方の中に果てた。ハァハァと二人分の乱れた荒い息遣いだけが聞こえる。銀八は性器をゆっくりと抜くと、イったばかりで敏感な土方はんんっ、と甘い声を漏らした。


(先生のが中にある)

それだけで幸せだと感じるのは間違っているのだろうか。

ソファから起き上がりティッシュを取りに行く先生。その先生の後姿を見ながら土方も起き上がりソファに座った。
ティッシュを持ってきた先生はいっぱい出たな、なんて笑い隣に座る。土方はその先生の上にまたがるように乗っかった。


「先生……っ、好き」

「うん」

「好き、大好き」

ちゅっ、ちゅっ、と何度も口づけた。先生の首へと腕を回す。先生は俺の秘所へと指を入れ先生の出した精液をかきだしていた。
前に好きだと伝えてから俺は、セックスが終わったあと何度も何度も先生に好きだと言った。先生は一度も好きだと言ってくれたことはなかったけれど。好きだと言うだけでその時は心が満たされるような感覚だった。先生と別れたあと、涙が出そうなくらいの虚しさが訪れるけれど。


「あ……っ、せんせ、んんっ」

かきだされながらずっと口づけていたら、噛み付くように先生に唇を奪われてた。舌で唇を開き熱い舌が侵入してくる。歯茎を舐め舌をくちゅくちゅと絡めてきた。それに応えるように自分も先生に舌を絡めると、キュッと吸われ腰が震える。先生のキスはまるで頭の中までぐちゃぐちゃにかき回されてしまっているかのような、激しいキスだった。
静かに唇が離れる。先生の息が、顔にかかる。心地いい。互いの唇の間でつながる糸がぷつりと切れた。


「せんせ……」

「おら、もう帰んな」

鍵閉まっちまうぞ? なんて笑う先生はもう俺を抱いてくれるような一人の男の顔じゃなくて教師、坂田銀八の顔だった。
先生は立ち上がると机に置いてあった煙草へと手をのばし一本火をつけた。知らないうちに後始末は終わっていたようで、土方はソファの周りに放ってある服へと手をのばす。

あと何回、先生と会えるのだろうか。
窓から見える景色が変わっていくとともに、こんなことを何度も考えた。そしてその度に胸が締め付けられる。


「先生、好きです」

煙草を吸う先生に後ろから抱きついた。教師の顔は見たくない。先生の白衣をぎゅっ、と握りしめる。
何度も好きだといった。本当に好きだから。好きで好きでたまらないから。きっとこの先も、ずっと。


「好きなんだよ、あんたのことが。先生……」

「早く帰りなさいって言ってるだろう?」

ぎゅっ、とさらに強く抱きしめたら回していた腕をやんわりと解かれた。あぁ、またそうやって先生は逃げる。先生の気持ちなんて、何一つわからない。


なんで先生は俺を抱く?

初めて抱かれたあの日から、ずっと消えずにいた疑問はこの先もわかることなんてないのだろう。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ