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□キミイロにソメテよ
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「悪ィ……、電話長くなった」
坂田の部屋を開け、思ったよりも長くなってしまったことに一言詫びを入れる。電話は近藤さんからで、ついつい話しが盛り上がってしまった。学校に行けば話せるというのに。
ベッドに寝転がっている坂田。けれど、坂田から返事がない。
「さか、た…?」
不思議そうに首を傾げ、坂田が寝転がるベッドへと近付いた。そこには仰向けになって規則正しい呼吸を繰り返す坂田。
(寝てやがる)
折角遊びにきてるのに。なんて思いつつも、別にこれと言ってすることもないし。と、土方はベッドの目の前に座り込んだ。
規則正しい呼吸が聞こえて心地好い。坂田の寝顔なんて滅多に見れるもんじゃないと、土方は坂田の顔を覗きこんだ。
(睫毛なが…、鼻もたけぇし)
まじまじと坂田の顔を見ると、意外と綺麗な顔立ちしてんだな、って思う。起きてたら死んだ魚のような目してるし、くっだらねーことペチャクチャ喋ってるしで今までそんなこと思わなかった。そういえばコイツ、女にモテるしな。顔だけじゃなくて、性格いいのもあるけど。
そうなんだ、コイツは性格が良すぎるんだ。
高校に入学して坂田と同じクラスになった。やたら突っ掛かってくる奴で、カンに障ることばっか言ってくる奴で大嫌いだった。それなのに突っ掛かってくるもんだから、知らぬうちに一緒に過ごす時間が増えた。そしたらコイツは意外にも性格が良くて。またそれがムカついたけど。二人で居るのが楽で心地好くて。いつしかつるむようになった。
誰とでも仲良くなれるくせになんで俺と一緒に居るんだろう、なんて疑問に思ったこともあったけれど。でも俺はそんな坂田のことを憧れてもいた。
そんな日々が続いたとき、急に坂田に告白された。びっくりしたし、正直意味がわからなかった。男同士だし、坂田を友達以上に見たこともなかったし。でももしここで断ったら、こんなに心地好い友達関係も崩れてしまうのかな。それは勿体ないとその告白を受け入れてしまった。
『ありがと、嬉しい』
そう言って初めて見るような柔らかい笑顔に、胸がぎゅっ、となったのは嘘じゃない事実だったが。
(それが、今はこんな……)
「坂田が好き、なんて」
一人で言って恥ずかしくなり、カァっと顔が赤くなる。
友達以上に坂田を考えたことはなかった。でも嫌いでもなかった。むしろ好き、のほうだと思う。意識したせいか、坂田が好きだったことに気付いてなかっただけなのか。俺は知らないうちにこんなに好きになっていた。
(こんな野郎を好きになるなんてよ)
性格も考え方も反対で。この天パの銀髪だって最初は不良だと思っていけ好かなかったのに。
自分のと全然違う銀髪。触りたい。おずおずと坂田の髪に手をのばした。
ふわふわしてるかと思ったら意外と硬い。自分の黒髪と感触が違って面白い。梳くように指を動かせば、心臓が煩い。寝てる坂田相手にも緊張する。
そのまま坂田の前髪に触れ、かきあげる。さらけ出された額が珍しい。普段より幼くなって、ククッと一人笑いをこぼした。
その手の平を額に滑らし、頬を撫でた。
「ん……」
ぴくり、と反応し声を漏らした坂田にびくん、と驚きに肩が上がる。ばっ、と手を離し顔覗き込んだが、起きた様子はなく、ホッと胸を撫で下ろした。
また手をのばせば頬から次は、声が漏れた赤くふっくらした唇をなぞった。
(あっ……)
さっき俺とキスした唇。俺のより厚くて色っぽい。ふにふに、と指で押して楽しんだ。
そういえばさっきキスした時、坂田の舌が入ってきて……
「――――――っ!!!」
カッ、と身体が熱くなる。坂田の舌の動きを思い出してしまい、ドクンドクンと鼓動が高鳴った。
なぞっていた坂田の唇がうっすらと開いていて。こんなこと考える自分が嫌で離れろ離れろと思うのに、鮮明にさっきのキスが思い出される。
「さかた…、さかっ、た」
呼んでも返事がない坂田。起きる様子はない。ゆっくりと顔を近付ければ視界いっぱいに広がる坂田の顔。規則正しい寝息が顔にかかって心地好い。微かに開いたその唇へ、自分の唇をくっつけた。
「…っん、んん、ふ…ん」
くっつけては離し、またくっつけては離しと何度も何度も口づけた。坂田の唇の感触が広がる。何度しても欲しくなって、何度しても足りなくて、必死に唇をくっつけた。坂田にキスすると何も考えられないくらい頭がボーっとする。
「は、ん……、ふっ、ん、…は」
興奮してるのか自然と息が乱れてくる。身体が熱くて熱くてたまらない。甘い疼きが身体中を駆け巡る。
頭に浮かんでくるのはさっきの坂田とのディーキス。ドクン。心臓が煩い。坂田の舌の動き、あの甘い刺激を身体が思い出し、これだけじゃ足りなくなってくる。
(気持ちイイ…)
坂田の唇を口に含みきゅっ、と吸ってみる。何だか美味しく感じて口に含んだままふにふにと刺激し、ペロペロと舌で舐めた。
(坂田の舌、舐めたい)
さっきキスされた時はびっくりして舐めれなかったことを思い出した。坂田の唇を何度か舐めたあと舌を入れようとしたのだが、うっすらと開いていた坂田の唇は知らぬうちに閉ざされていた。
「はぁ……っ」
鼻にかかった声を漏らし、ゆっくりと唇を離した。
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