▼Main
□キミイロにソメテよ
1ページ/13ページ
「ねぇ土方、キスしてもいい?」
「……いちいち聞くんじゃねぇ、バカ」
「だってキスして嫌がられたら傷付くじゃん、俺が」
なんて笑い坂田は土方のサラサラな黒髪を撫でた。坂田の指が黒髪を梳く、その指がたまに耳に掠り、くすぐったい。そして坂田はほんのりと赤く染まった頬を撫でた。
坂田が触れる箇所がじんわると熱くなってくる。
(嫌がるわけねェのに)
なんて、絶対に言ってやらないけれど。
一度睨みつけるように坂田を見るも、ゆっくりと目を閉じた。それが合図とも言わんばかりに坂田は土方に顔を近付け、唇を重ねた。
時計の秒針だけが耳に届く。飽きるほどきた坂田の部屋。けれど、付き合ってから坂田の部屋にきたのはまだ、片手で数え切れるほどだけだ。今までは気づかなかった、染み付いた坂田のにおいにこんなに恥ずかしくなるとは思わなかった。飽きるほど通った部屋なのに、こんなにも慣れないなんて。
離れていく坂田の唇。うっすらと目を開くとまた重なる唇。チュッ、チュッ、と恥ずかしくなるくらいリップ音を鳴らし何度も口づけされる。
恥ずかしいけれど、坂田とのキスは嫌いじゃなかった。胸がほわほわと熱くなって、気持ちイイ。自分からなんて出来ないけれど、その分坂田がしてくれる。
「んっ、…ふ」
「土方」
「あァ? っ、……ん!」
熱っぽく名前を呼ばれ首を傾げるが、直ぐにまた唇を塞がれる。
ふにふにと味わうように唇を刺激されて、背筋がゾクりとした。思わず開いてしまう唇。くちゅり、と音をたて坂田の舌が入り込んできた。
(……え? 坂田のししししししたが俺の口の中に!?)
驚きに目を見開くと目を閉じてなかった坂田と目が合い、耳まで顔が赤くなる。たまらなくてぎゅっ、と目を閉じた。
触れ合うだけのキスは何度かした。坂田のことは好きだが男同士の付き合いだ。一体どうしたらいいかわからなかった時に、坂田からキスされた。
男にキスされるなんてと思ったけれど、男同士でも恋人にかわりないのだからキスするのは当たり前のことだとキスされてから気付いた。
でもまさか、ディーキスすることになるなんて。
(恋人だから当然、なのか……?)
悶々と悩んでるうちも坂田の舌は口の中で刺激を与える。クチュクチュと舌を絡ませてはキュッと舌を吸われビクンと身体が反応した。耳を塞ぎたくなるような音。されるがままに口を開き、坂田の服を掴みぎゅーっと握り締めた。
「っん、ふ……、はっ、んん」
坂田の舌が俺の舌の裏を舐める。快感が背筋を走り目が濡れた。口内を掻き回されれば、自然と身体が熱くなる。
ふわふわする。何も考えられない。頭の中までぐちゅぐちゅになってしまった気分だ。
プルルルルルルル
これからどうなってしまうのか。なんてふと思った時に電話の着信音が部屋に鳴り響いた。びっくりして二人は唇をガバッ、と離した。
「わ…っ、悪ィ、電話」
初期設定のままの着信音は土方の携帯だ。こればかりはタイミングが悪すぎる。気まずそうに言えば坂田はこのタイミングでの電話が面白かったのか「早くでな」と笑った。
(なんか……、もう、恥ずかしい)
急いで携帯を取り出し、土方は照れ臭くて坂田の部屋を出た。
「タイミング悪すぎだろオイ」
土方が出て行き一人坂田はバフン、とベッドに横になった。ドアの向こうに土方の話し声が聞こえる。
(可愛かったなぁ……)
初めて土方の口の中に舌を入れてみた。そしたら顔を真っ赤にして、俺の服を握り締めてきて。純情にもほどがあるだろ、と坂田はクスリと笑みをこぼした。
土方とは高校で知り合って友達になった。最初は無愛想なくせに口の悪い土方にムカついて喧嘩ばっかりしてた。なんだかんだで話す機会が増えれば、意外と情に脆かったり、何事も完璧な奴だと思ってたら裏で人の何倍もの努力をしてたり、頭いいくせに天然だったり、無愛想の強面のくせに笑顔が可愛かったり……。
喧嘩はするものの段々土方と仲良くなっていった。一緒に居る時間が多くなって、色んな土方を知った。そして知らないうちに、土方に惚れてた。俺はホモなのかってすごい悩んで、何度もこの気持ちを諦めようとした。
でも諦めるくらいなら当たって砕けてから諦めたい。と、砕けちる覚悟で告白したら、まさかの両思いってやつでお付き合いを始めたわけだ。
今まで友達だった土方にキスしたりするのはまだ照れ臭いけど。
「今が一番幸せかも、俺」
なんて呟けば照れ臭くて恥ずかしくて顔が熱い。こんなに土方が好きだなんて俺ってば気持ち悪いな。
(あー……。土方抱きてぇ)
まだ、早いよな。
あの純情ぶりだし。もう少し我慢しろ俺。
でも土方が純情じゃなくなる日なんてくるのだろうか?
(当分我慢しなきゃいけねぇよな。頑張れ俺)
.