短編

□狐の昼時
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昼休みのチャイムが高らかに鳴り響く学校内。
教師の授業終了の合図と共に教室を飛び出した。



「おにーさん!!きつねうどんといなり寿司頂戴!!!」

食堂に着くなり食券を買い、もう顔馴染みになったお兄さんに券を渡すと

「コン君はあいかわらず元気ですね
はい。いつものです」

既に用意されていたのか数秒のうちにいなり寿司と湯気の立つうどんを渡され、目の前のそれにニンマリと笑いながらお兄さんにお礼を告げると、食堂を後にする。
てけてけと向かう先は俺のお気に入りの場所である屋上だ。

山奥に有る全寮制のこの学園は昼休みになると殆どの生徒がこの食堂に集まる。
購買を利用する奴等も居るには居るが、それでも昼時にはこの食堂は人で溢れ返るのだ。
人混みがあまり好きじゃ無い俺は多少の徒労はあっても食堂で食べる事は遠慮したいし、何より牢獄の様な教室の窓から見えた空は外に出てこいと促す様な快晴で
そんな条件が揃ってしまったのなら外に出ない方が馬鹿だというものだ。

階段を駆け上がり、鉄製の扉を開ければ視界一杯に広がる青

「いい天気ー!!」

両手がトレーで塞がって居なかったらきっと伸びをしていただろう天気に早速日差しの良さそうな場所を探して腰を下ろす。

両手を合わせていただきますをしてからうどんをすすり、揚げを食べる。
噛んだ途端、ジュワッと広がる甘味のあるダシの味が広がり幸せな気分になった。
うん。
ここのきつねうどんはやっぱり最高。

一心不乱に昼御飯を食べ進め、最後のいなり寿司に手を伸ばそうとすると
ヒョイッと横から伸びた手に奪われた。

「あ――――――っっ!!!
俺の最後のいなり!!!」

「ん…ごっそーさん」

俺の悲痛な叫びに飄々とするいなりドロボーを俺は睨み付ける。

「何すんだよ!!このワンコロがっ!!!」

「あぁ!?誰がワンコロだよ!!?この狐野郎!!!」

「ワンコロをワンコロって言って何が悪い!!!
俺のいなりさん返せ!!!」

いなりドロボーこと、犬神は「食ったモンが返せるかよ」と横に座りだし、ポケットから煙草を取り出して口にくわえる。

「狐ぇ。火くれ」

ちょいちょいと煙草の先端を指差す仕草はムカつくが格好良い。
キラキラと日の光を反射して光る銀の髪。
白すぎない健康的な肌に切れ長の眼に通った鼻筋。
男子校ながらもキャーキャーとチワワの様な女男に騒がれるだけはある。

だが、生憎と俺はそんなコイツを見ても全くときめかない。
むしろ平凡顔な俺に対しての当て付けの様に見えて苛つく。
俺のいなり寿司食った罪も加えて苛立ちは倍以上だ。

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