贈り物

□日常
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夢ではありません


仕事が終わる時間になると、決まって少女が1人、ドアの前で待っている。

「今日も待ってるな」
「そうだな」
「よく飽きないな」
「勉強熱心なのはいいことだろ」
「いや、コテツがさ」
「は?」

書類を書き終えて筆記用具を置くのと、間の抜けた俺の声が重なる。

「今日も頑張れよ」
「仕事よりハードだよ、まったく…」

呆れながらドアを開くと、ぱぁっと顔を輝かせて、いつも同じセリフを言う。

「コテツさん!修行しましょう!」

お団子頭でチャイナ服の少女、テンテンは武器を使った戦闘が得意なくノ一。俺と同じように武器を口寄せして戦う。
どこから情報を得たのか知らないが、俺が武器を口寄せして戦うことを聞いてきて、やれ修行だ、やれあの武器をみせろ、口寄せをしろと毎日毎日やってくる。

「お前、飽きないの?」
「飽きません!さ、行きましょう!」

もはや恒例なのだろうか。テンテンに引きずられるようにして拉致される俺をみた他の職員たちが「がんばれよ」などと声をかけてくる。なかには「今日は勝てるといいな」とテンテンを応援する輩まで出る始末。「はいっ勝ちます!」じゃねえよ。


日が傾くころ、いつもの場所、と言えるほど頻繁に訪れるようになった訓練場で、いつものように、と言えるほど恒例になった修行をする。
最近、俺の忍人生において最も真面目に修行している気がする。



「そら!」
「うっ!!」

もちろん修行だ。本気を出しはしない。ただ、テンテンは本気だ。時折、修行中俺を睨みつける目に背筋が寒くなることがあるくらいに。

日々少しずつ、こいつは成長している。それがわかるから、ほんの少し楽しい。

金属が競り合い弾かれ、落下する音。今日で何回目だ?しかし、すばやくクナイを拾い上げると、テンテンは構えた。

「まだやるか?」
「……うぅっ…今日も勝てなかった!!」

問えば、がっくりと膝をつくテンテン。からん、とクナイが音を立てて地面に転がった。長く付き合ってやってるからか、なんとなくこいつの体力の限界ってやつがみえるようになった。今日はもう無理だろうな。

「わたし、成長してます?」

修行中とはうってかわった純粋な目で俺を見上げる。

「してるよ。だからんな顔すんな」

横にしゃがみこんで、乱暴に頭を撫でると、「よかったぁ」と安心した声をだして笑う。

「いつかコテツさんに勝つんだー」
「そりゃ無理だろ」

立ち上がり、テンテンの腕も引っ張って立たせる。「えー」とか文句言うのは無視。

オレンジから黒に変わりかけた空を見上げて、日もくれるし、今日の修行はここまでだな、といえば、残念そうにテンテンが口を尖らせる。

「また明日な」

そういえば、テンテンはボロボロになった顔を輝かせて笑う。









(飽きられたら困るのはこっちだな)

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