庭球お話
□変化
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雅也が、なんでか知らないけど、カチューシャして学校きた。
「ヒナ、これ、どうだ?」
似合ってる。かっこいいし、なんかかわいい。さすが雅也。
ただ、そう思ったのは、わたしだけじゃないみたいで、次の日の放課後、女の子が各々手にヘアバンドだの、カチューシャだのを持って雅也のとこに集まっていた。
きゃいきゃいと遊ばれてる雅也は、少し嫌がって、少し怒って、笑ってた。名前も知らない女の子が、雅也にベタベタベタベタ。なにあれ。
雅也もへらへらしてさ。なにそれ。
ばかみたい。
もう1人で帰っちゃおうかな。
教室の入り口に立つわたしに気づき、雅也が声をかけてくれた。
「お、ヒナ!すぐ準備するな!」
「しらない。勝手に遊んでればいいよ」
教室を立ち去るときに聞こえた「感じわるーい」なんて、気にしない。感じ悪くしたのだ。だいたい雅也に触ったあなたが悪いのよ!
「まさやー」
「なんだー?」
家で一緒に勉強していたが、イライラして集中できない。
名前をよべば返事をするけれど、雅也は真面目に勉強している。
机と雅也の間に体をねじ込んで、ぐしゃっと雅也の髪を乱した。
「ヒナ?」
ぐしゃぐしゃと、無言で髪型を崩していく。完全にぐしゃぐしゃになっても、わたしはただ髪を触っていた。
雅也スルースキルはんぱないなって思っていたら。
「ヒナ、どうした?」
雅也がいつもよりすごい優しい声で聞いてくる。ペンを置いて、背中をなでてくれた。
言わなきゃ。でも言っていいのかな。嫌われないかな。
「ヒナ、泣くなよ」
「泣いてないハゲ」
「泣きそうだろ」
「泣かないってば」
なにこの(将来的に)ハゲ調子乗ってるの。ちょっと今嫌われないかなとか思ったわたし馬鹿みたいじゃない。
「機嫌悪いのなー」
わたしを抱きしめながら雅也は笑う。雅也の肩に顎を乗せて呟く。
「やきもちやいた」
「俺が?」
「わたし」
「いつ?」
雅也が撫でる位置が背中から後頭部へとうつる。
「さっき。女の子たちと楽しそうにしてたから、ハゲろって思った」
「ハゲろって…」
「だって、ハゲたらきっと女の子近寄らないもん。そしたら雅也はわたしだけの雅也」
「でも、ヒナは俺がハゲたらいやだろ?」
ハゲてもすき
(ハゲても太っても雅也が好きだよ)