捧げ物・企画

□L
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その日の夜、ルルーシュは悩んでいた。

昼間のユフィの言葉が頭から離れてくれない。


ユフィに反対されたのは意外で、しかもスザクを好きだった事に更に驚いた。


「俺は…どうすれば…」


ユフィはスザクの幼なじみで、初めて会った時からルルーシュとも仲良くしてくれていて…

そんな彼女の悲しそうな顔を見るのは辛く、出来れば回避したかった。


でも…


「スザクを…失うなんて…ッ」


〜〜♪


「…ぁ」


着信を告げる音楽が部屋に響き、ディスプレイを見るとカレンと書かれていた。

今は人と話したくなくて無視をしていたが、なかなか切れない着信音に仕方なく通話ボタンを押す。


「もしも…」

「ルルーシュ大変なの!スザクが…ッ」

「、え…?」


カレンとの会話を終えると、ルルーシュは上着も着ないで家を飛び出した…――


***


「カレン!」

「っ…ルルーシュ」


たどり着いた場所は病院。

――スザクが、スザクがバイクに轢かれて…!!


かなり焦った声で話すカレンから病院の名前と場所を聞いて電話を切った。

急いで駅まで走り、其処からタクシーに乗って…


30分後、漸く病院に到着した。


「スザクの様子は…ッ」

「かなり危ないらしい」


カレンに寄り添うように側にいたジノが不安そうに言う。

既に病室に運ばれているスザクに会わせる為に、カレンがルルーシュの手を引いた。


「危ないって、どういう…」

「今夜が峠だと…」


頭を鈍器で殴られたような衝撃がルルーシュを襲う。

現実が受け入れられない。


「此処よ…病室。会ってあげて」

「……」


ふらりと病室に入る。

心臓が飛び出すのではないかというくらいドクドクと煩かった。


「スザ…ク……?」


頭に包帯を巻いて酸素吸入機をつけて…真っ青な顔をしてスザクは眠っていた。

そっと手を握ると驚くほど冷たくて、まるで死んでしまったようで…――


(スザクが…死ぬ……?)


ルルーシュの頭を過ぎったのは幼い頃の記憶。

8歳のルルーシュを残し、逝ってしまった両親。


あの時も寒い時季で、凍った路面で車のタイヤが滑ってしまったための事故だった。


真っ青な顔…今のスザクと同じ顔をして両親は逝った。


「スザクが…死んでしまったら…っ」


そんな事は耐えられない。

また1人になんてなりたくなかった。


(神様…どうかスザクを)


助けて…ルルーシュは静かに呟いた…――


***


「一緒に出かけた帰りだったんだ」

「一緒に?」


次の朝、何とか峠を越えて落ち着いた頃ジノが事情を話し出した。


「俺達の目の前だった。多分、浮かれてたんだよスザクは」

「浮かれるって…何で、」

「プレゼント買ったんだ…ルルーシュの誕生日の」

「!」


聞かされた事実は衝撃のものだった。

まさかルルーシュの誕生日が関係しているとは想像してなかったから。


「これ…事故の衝撃で汚れちゃったけど、この指輪を買ったんだ」


ジノの掌に乗せられていた指輪には、S.Lと彫られていた。


…きっとスザクは頭を悩ませて考えたのだろう。


「…ッ」


涙腺が壊れてしまったんじゃないかと言うくらいぼたぼたと涙がこぼれる。

自分が誕生日を教えなければ…そんな気がしてならなかった。


「ごめんなさい…私達ももっと気をつけていたら…」


ぶんぶんと首を振る。

ルルーシュにも本当は分かっていた。


――…誰も悪くなんてない…


「…峠は越えたんだ。だから後は、皆でスザクが目を覚ますのを待とう」


止まらない涙を拭いながら、ルルーシュは小さく頷いた…――


***


「ユフィお嬢様…大丈夫ですか?」

「……はい…」


スザクが事故にあったと聞いてから、ユフィはすっかり元気をなくしていた。

ライはそんなユフィが凄く心配だったが、執事の立場では出来る事が限られている。


(今は…ただ祈るしか…)


それはどちらの願いだったのか…――

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