捧げ物・企画
□K
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12月に近づきすっかり寒くなった頃、ちらちらと雪が舞いはじめて寒さは更に厳しくなった。
街は早くもクリスマスのイルミネーションで飾られていて、カップル達も多い。
でも、スザクにとってはクリスマスよりも大事な事がある。
「誕生日プレゼントどうしようかな…」
去年は祝えなかったし、今年はちゃんと祝いたい。
でもユフィにしかプレゼントをあげた事がないスザクにはどんな物が良いのか分からなかった。
「…あ!」
良い事を思いついた。いるじゃないか。身近に仲良しカップルが…――
***
「プレゼントぉ?」
「私達の体験なんて当てにならないと思うけど」
「でも、僕よりは増しだと思うから」
プレゼントねぇ〜…と腕を組みながら悩むジノは、暫く考えた後にこっと笑った。
「やっぱ一般的には花じゃないか?女性は綺麗な物が良く似合うからな」
「そう?花より日常的な物の方が女としては嬉しいけど」
ならアレは、コレは等、様々な意見をカレン達は考えてくれたが、1つ問題が…
「あの…プレゼントあげるのってルルーシュなんだ」
「え?女の子じゃないの?」
てっきり女の子だとばかり思っていたカレンは目を真ん丸にさせていたが、何故かジノは冷静だった。
「そっかルルーシュか。なら違うのが良いよな…」
再びうんうんと悩みだしたジノを余所に、カレンが言葉を発する。
「ねぇ、アンタの誕生日にルルーシュは何かくれたの?」
「うん。このブレスレットをくれたよ」
右腕につけているブレスレットを見せる。
そこまで高価な物ではないけれど、どんな物よりも大切な物。
「ふ〜ん…なら、同じようにアクセサリーはどう?」
「お!良いな。指輪とかどうだ?」
「指輪…かぁ」
ルルーシュの指は細くて綺麗だから、きっと指輪が似合うだろう。
「うん、指輪にするよ。有難う。相談にのってくれて」
「良いって」
「ねぇ、今日は無理だけど、後日指輪選ぶの手伝いましょうか?」
それは有り難いかもしれない。
指輪を初めて買うスザクにとっては誰かいた方が心強いだろう。
「じゃぁ頼もうかな。いつなら平気?」
「今週の日曜日は?」
「分かった。日曜日だね」
今から指輪選びが楽しみだった…――
***
「ねぇルルーシュ、ユフィにだけは僕達の事言っても良いかな?」
「ユフィ…か」
帰り道にそれとなく聞いてみる。
付き合ってから大分経つが、未だに周りには言っていない。
「やっぱり駄目…?」
「いや、俺もそろそろ言わないとと思っていたんだ。だから…ユフィは任せる」
柔らかく微笑んで手を繋ぐ。
ユフィならきっと分かってくれるだろうとスザクは考えていた…――
***
「え…」
「驚かせちゃったかもしれないけど、僕は今幸せなんだ」
遊びに来たユフィにいきなり伝えて大丈夫か不安はあったが、やっぱりユフィには理解してほしかった。
大切な幼なじみで妹のような存在。
そんな彼女ならきっと理解してくれるだろうと。
「ルルーシュ…ですか」
「うん…」
急に静かになってしまって、もしかして困らせてしまったかと焦る。
ユフィの泣き顔は苦手なので、出来ればそれは避けたかった。
「少し驚いてしまいました。…おめでとうございますスザク」
「…有難う!」
にこりと笑って祝福してくれたユフィを見てスザクも安心し、釣られるように笑った。
***
〜〜♪
「…ん?」
メールが届いた事を告げる音楽が流れ、ルルーシュは携帯を手にとった。
てっきりスザクかと思っていた送り主は意外な人物で、ルルーシュの手は一瞬止まる。
「ユフィ…」
内容は簡潔で、明日一緒にお茶をしないかというものだった。
明日はロロやナナリーとお茶菓子の買い出しに行くという予定があったので、別の日で良いかメールを送る。
数分後、再び来たメールには後輩も連れて来て良いからと書かれていた。
「何か急ぎの用だろうか…」
この前スザクがユフィには伝えたいと言ってきた事を考えると、恐らくその事についてなのだろう。
祝福してくれたとスザクは言っていたが、何となくルルーシュは不安になった。
「……」
とりあえずロロとナナリーには明日の予定が変わった事を伝えなくてはと、ルルーシュは再び携帯を開いた…――
***
「いらっしゃい」
初めて上がったユフィの家はスザクの家より大きかった。
ロロとナナリーも緊張しているようで、ルルーシュの背後からヒシヒシとした空気を感じる。
「急に呼び出してごめんなさい。ルルーシュとお話ししたくって」
「あぁ…構わない。俺も話したい事があったから」
花が綺麗に咲き誇る庭に通されて、パラソルが設置されている机に座った。
間もなくして運ばれてきた紅茶はとても良い香りがして、ロロ達も興味津々に見ていた。
「美味しい紅茶が手に入ったの。ルルーシュ達に飲んでほしくて」
「良い香りです」
ユフィの言う通り、その紅茶は本当に美味しかった。
今まで飲んできたどの紅茶より香り豊かで味わい深い。
「ユフィ…先ほど話しがあると言っていたが、スザクとの事か?」
「……えぇ」
「なら、俺からまず話させてくれないだろうか」
構いませんと言ったユフィを確認して、ルルーシュはゆっくりと話し出した。
「ロロ、ナナリー。お前達に言っておきたい事がある」
急に真剣な空気になったからか、ロロ達も些か驚いている。
ルルーシュも、これから言う事を考えると少しだけ不安になった。
「俺とスザク…付き合ってるんだ」
男同士の恋愛なんて普通ならありえない。
だから全員に理解してもらうのは不可能だとルルーシュは思っている。
出来ればロロ達には嫌われたくなかったが、受け入れられなければ無理はさせたくない。
「そっか…やっぱりね」
「私は、先輩が幸せならそれで良いです」
「…うん…僕も」
戸惑いは少なからずあったのだろう。
だが、すぐにロロ達はふわりと笑った。
「軽蔑…しないのか?」
「そんな事ある訳無いよ」
ロロ達の笑顔が本当に温かくて、ルルーシュは一瞬泣きそうになる。
改めて2人の大切さを感じた。
「私、は…」
今まで黙っていたユフィの声が響き、ルルーシュ達から笑顔が消える。
泣きそうに震えた声でユフィは話しはじめた。
「私は、男同士で付き合うのは可笑しいと…思います」
「ユフィ…」
意外だった。
スザクから特に何も聞いていなかったルルーシュは、てっきりユフィは祝福してくれているのだと思っていたから。
膝の上で両の拳を握りながら、更にユフィは続けた。
「私は…私も、スザクが好きです」
歯車のずれる音がする。
「きっと、」
その先は聞いてはいけないような気がした。
「きっと私の方が、昔からスザクを好きです…!」
ユフィの瞳がギュッと閉じられた…――