捧げ物・企画

□E
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スザクは確かに話しやすい。

だが、クラスが同じにならなければそれまでだろうなと思ってた。


少し寂しさを感じたルルーシュだったが、クラス表を見た時、その寂しさは早くも取り越し苦労となる。


「ルルーシュ!僕達同じクラスだね!」

「そう…みたいだな」


クラスの数は3つ。

確率としては1/3…その確率が当たったらしい。


「これから宜しくね!」

「あぁ…宜しく」


2人はこの日2回目の握手をした――


***


教室の中は結構騒がしく、もう既に幾つかのグループが出来ていた。

ルルーシュ達も黒板で自分の席を確認し、人込みを掻き分けながら席へ向かう。


「席も近くて良かったね」

「そうだな」


ルルーシュは一番後ろの窓際、スザクはその席の斜め右前の席だった。

ちなみに2人の隣の席はどちらも空いている。


…荷物は置いてあるみたいだったので、おそらく後で戻ってくるのだろう。


「もう何人かグループ出来てるね」

「友達同士で一緒に受験したとか、恐らくそんな感じだろうな」

「僕達みたいに今日初めて会ったけど、気が合って仲良くなったのかもしれないよ」

「う…ま、まぁ確かにそうかもしれないが…」


スザクがさらりと恥ずかしい事を言ったおかげでルルーシュは一瞬赤くなる。

…思わず言葉も吃ってしまった。


***


そろそろベルが鳴りそうな時間になった時、スザクとルルーシュの隣の席の人物が戻ってきた。

金髪で、片方だけ3本の三つ編みをしたやたらと背の高い少年(本当に同い年か問い詰めたくなるが)と、肩くらいまでの真っ赤な髪を外側へ跳ねさせた少女。


「お!君達が隣の席なんだな。わた…俺はジノ。ジノ・ヴァインベルグだ」

「紅月カレンよ。宜しく」


簡単に挨拶をして席に着く。どちらも話やすそうな感じだった。


「僕はスザク。枢木スザクだよ」

「ルルーシュ・ランペルージだ」


軽く握手をする。

…今日はあと何回握手をするんだろうなんて考えが頭を過ぎった。


「ヴァインベルグさんと紅月さんは仲が良いんだね。幼なじみとか?」

「スザク〜水臭いじゃないか!折角同級生で同じクラスになったんだからさ、名前で呼んでくれよ〜」

「アンタは許可をとる前から名前呼びだし…」


例えるならゴールデンレトリバー。ジノは堅苦しいのは嫌いらしい。


「えっと…じ、じゃぁジノ…とカレン?」

「よぉし!お互いに壁も無くなったところで質問に答えよう!」

(壁…無くなったのか?)


ルルーシュの心の中で生まれた疑問に答える者はいない。


「俺とカレンは中学からの仲なんだけどさ、今はラブラブなんだよね〜♪」

「へぇ〜そうなんだ!確かにお似合いだね」

「お!スザク、見る目あるな〜」


天然なスザクだからか、ジノとは妙に気が合うみたいだ。

ルルーシュだったらどうして三つ編みが3本ぶら下がっているんだとか、その底無しの明るさは何だという疑問で頭をグルグルさせていただろう。


「中学の時に物凄いアプローチされたのよ。最初は鬱陶しかったんだけどさ、ある日ジノが風邪引いて休んだの。…それで気づいちゃったのよね」

「風邪様様って感じだよな!」


…何だかんだで結果オーライだったらしい。


「ジノは確かにアプローチが凄そうだな」


ルルーシュが何気なく言った一言にジノはキョトンと 、カレンは目を輝かす。

何か可笑しな事を言っただろうかと、今度はルルーシュがキョトンとしてしまった。


「凄いなんてもんじゃないわよ!ヤバいんだから!」

「あれくらい普通じゃないか?」

「私の誕生日に薔薇の花をトラック2台分用意する事のどこが普通なのよ」

「「2台!?」」


カレンの言葉に思わずスザクとルルーシュはハモる。
薔薇をトラック2台って…一般人の感覚とは掛け離れている。

ジノってもしかして…


「何となく気づいたかもしれないけど、こいつボンボンなのよ。でもあんま金持ちっぽくないけどね」


変に気取ってないし、とカレンは続けた…――


***


「初日はあっという間に終わったな」

「うん。楽しかったな〜」


入学式前はどうなるかと思ったが、終わってしまえば実に短い1日だった。

スザクは今日を振り返り、思わず微笑む。


「…っと、そういえば、ルルーシュの家もこっちの方なの?」


午前中で終わった今日は何だか物足りなかったのか、仲の良い者同士で遊びに行く約束をしてる人達もいた。

だがスザクは家が少し厳しいので帰る準備をしていたところにルルーシュがやって来たのだ。

「一緒に帰らないか」と。


「ん?あぁ。俺の家、あの学校から歩いて15分くらいなんだ。家から近いからあの学校に決めたようなものだし…」

「えぇ!?それだけの理由で!?」


一応あの学校はこの辺りでも結構有名な学校だ。

だからその分倍率だって高いし、勉強だって難しい。

あの学校に入る為に僕は死に物狂いで勉強したのに――スザクは苦笑いをした。

でも…何故かルルーシュを妬む気にはなれなかった。


「そう言うスザクはどうなんだ?」

「僕?僕は電車で2駅離れた場所にあるんだ」


ふ〜ん…と、聞いた割りには少しどこ吹く風なルルーシュ。

何だか掴めないような感じもするなぁと思ったのは秘密だ。

そんな感じで話をしながら歩いてると、2つの分かれ道にぶつかった。


「あ、駅に行くにはこっちの道の方が近いんだけど、ルルーシュはどっちに行く?」


左の道を指差しながらスザクが聞くと、ルルーシュは「俺はこっちの道が近いから、此処でお別れだな」と右の道を指しながら言った。

少し寂しく感じたが、また明日も会えるし…とスザクは思う。


「じゃぁルルーシュ、また明日ね!」

「あぁ。またな」


ルルーシュが軽く手を振るのを確認して、スザクは駅に向かって走り出した。


「…また…俺は繰り返すのか…」


ルルーシュが小さく呟いた言葉は、遠くまで走っていってしまったスザクには届かなかった――

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