Black Angel
□謎の噂
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「クッ…火のない所に煙は立たないさ…」
「え!てことは本当…」
「だが。でっかい尾びれがついて、魚は海を漂っているな…その火で尾びれがでかい魚を焼いて食うのも良いんじゃないか」
「……」
つまり、火のない所に煙は立たないが、その噂には大量のデタラメが混ざっていると。
そう言われても、どれが真実か嘘かなんて、俺に分かる訳がない。
ヴィルの噂は、それこそ俺の知ってるものから知らないものまで混ぜて、百以上あるのだから。
ならば、その火元を探れば良い、と、俺はその褐色な肌に顔を近付けた。
「隊長さんの噂が出回るようになった原因は、何だい?」
「ククッ…これまた直球で核心を突いてきたな…」
「残念ながら、オジサンは好奇心旺盛な若者なんだよー」
からかうようにケラケラと笑ってみせたら、中身はまだまだ青臭ぇクソガキだったな、なんて鼻で笑われてしまった。
俺はその言葉を聞いて、それこそ子供のように唇を尖らせてみる。
「若者は若者でも、クソガキじゃねぇよ。オジサン、これでも頼りになるよ!」
「クッ…自分をこれでも呼ばわりか、ガキに見えると自覚してんじゃねぇか」
ちょっと言葉を間違ったみたいだ。
俺は若作りはしても、ガキに見えるようにはしてない、決して。
心の中で断言したところで、話を反らされていると気付いた俺は、またちょっとムカついてから酒を飲む。
「というか俺よりも、アンタの方が若作りしてんじゃないか?隊長さん、一体いくつなんだい?」
「クッ…さぁな。いくつに見える?」
「…分かるかよー」
魔界では、他人の年齢なんて分かる訳ないのだ。
見た目のままの年齢だったり、悪魔たちのように見た目と本来の年齢が全く異なったり。
つまり、個人個人の肉体の時間軸が違うらしい。
俺は通常の時間軸派だ。
「とりあえず百歳は越えてるだろ!」
「クッ…そんな老けて見られるとはな…予想外だぜ」
「だって百年前から警備隊にいるんだろ?魔王様も言ってた」
「…魔王サマもいつも悪戯が過ぎるぜ…」
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